財産分与の対象

1 はじめに

0007-1.jpgのサムネール画像   民法768条1項では,「協議上の離婚をした者の一方は,相手方に対して財産の分与を請求することができる。」と定められています。この協議が調わないとき,または協議をすることができないときは家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができます(同条2項、家事事件手続法150条5号など)。

2 財産分与の要素

財産分与には,清算・慰謝料・扶養の三つの要素があるとされていますが,慰謝料は不法行為に基づく損害賠償としても把握できること,扶養は補充的な扱いにされがちであることから,財産分与の中心は清算です。
そして,清算の観点から分与すべき財産を考えるならば,夫婦が婚姻期間中に協力して形成した財産が対象財産となるといえるでしょう。

 

3 特有財産

夫婦の一方が婚姻前から有していたり,相続などにより婚姻とは無関係に取得した特有財産は,婚姻期間中に協力して形成されたものではないので,財産分与の対象財産に含まれないことになります。
しかし,いったん婚姻とは無関係に一方の配偶者が取得した財産を、他方の配偶者が維持形成に寄与した場合には,その一部を財産分与の対象にする場合もありえます。財産の取得原因だけでなく取得後の経過も判断材料になりうるのです。

 

4 別居後の財産

婚姻期間中に協力して形成した財産が対象になるのであれば,協力して形成されていない財産は対象になりません。通常は別居後,財産の形成に協力し合う関係でなくなりますので,別居後の財産は対象にならないといえるでしょう。

 

しかし,サラリーマンの世帯では別居中も夫が住宅ローンを返済し妻が子を養育するなどの役割分担がなされている場合には,協力関係は続いているのではないかとの見解もあり,別居により直ちに協力関係が喪失するとも断定できません。

 

5 財産の名義

婚姻期間中に協力して形成した財産かどうかが実質的に判断されるのであり,財産を自分の名義にしておけば特有財産として財産分与の対象とならなくなるわけではありません。

 

未成年者名義の預貯金の形にしたとしても,実質的に判断して財産分与の対象とされることになるでしょう。
 
会社名義の財産は,会社が財産分与の当事者でない以上,財産分与の対象にはなりません。
しかし,夫が経営する会社名義の財産の形をとりつつ,その会社が実質は夫の個人企業で,経営や財産を支配している状況であるならば,会社名義の財産も財産分与の対象になりえます。

 

6 退職金

将来取得できる財産としての退職金も財産分与の対象になりえます。「相手方は、申立人に対し、相手方が(勤め先)から退職金を支給されたときは(いくら)支払え。」などの形で求めることもあれば,現時点で退職した場合の退職金額を算出したり、将来退職した場合の退職金額を現時点で算出して求める事案もあるようです。

 

7 住宅ローンを被担保債権とする抵当権の設定された不動産

住宅ローンの残債務がある場合、不動産価値から住宅ローンの残債務を差し引いた剰余価値を財産分与の対象とみるのが通常のようです。
 
しかし、剰余価値がない場合には、財産分与の対象とすることは相当でないと判断した裁判例があります。
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