顧問弁護士の活用法

1 はじめに

 税理士、社会保険労務士などは月又は年単位で必ず一定の委託業務があるので、特に「どう活用したら分からない。」といった声を聞くことはないのですが、弁護士については「何かあって相談すれば助言してくれるというのは分かるけど、いつ、どのタイミングで、どんな相談をすれば分からない。」という声を聞くことが少なくありません。

そこで、この頁では顧問弁護士の活用方法について解説します。

2 弁護士の知見・能力とは

 弁護士といえば「訴訟」「法律のプロ」というイメージが強いですが、これをもっと分析的にみると、弁護士の能力は、①法律知識と事実認定能力をもって訴訟になった場合の結論を予測して、逆算的に合理的な選択をアドヴァイスする能力、及び②交渉力の2つといえます。

会社は、顧問料の対価として、能力①に基づいた助言を受けることで、違法行為を回避し、法的賠償を免れるなどの利益を得ることができます。また、能力②に基づいた代理業務により回収困難であった債権を回収したり、不当な請求を諦めさせることで無駄な労力を割くことを回避することができます。

後記3では、具体的に弁護士の業務価値を数値化する手法を紹介していますのでご参照ください。

3 弁護士の価値とは?

 弁護士の価値を「良いアドヴァイスがもらえる」「紛争になったときに上手く解決してくれる」と抽象的に捉えるのではなく、ここでは弁護士の業務価値を具体化する方法について紹介します。

たとえば、ある会社Y社において、従業員Xから「従業員Aからパワハラ行為を受けた。Y社が使用者責任に基づき私に対して100万円を支払い、かつ従業員Aを別支店に異動させなければ、Y社を訴える。弁護士に相談したら、訴訟になった場合、220万円程度を支払えという判決が出るだろうと言われた。」と言っているとします。

 このような事案において、Y社は、訴訟になった場合の見通しが全く分からないため、敗訴して180万円を支払う可能性と勝訴して1円も払わなくてもよくなる可能性をそれぞれ50%と設定したとします。

 そうすると、訴訟の期待値は、(-220万円×50%)+(0円×50%)=-110万円になり、和解に応じて100万円を支払った方がよいということになり、Y社は100万円を支払って示談することになります。

 ここで、顧問弁護士から「訴訟になった場合、従業員Xの主張や証拠関係を見たところ、全面敗訴する確率はせいぜい20%程度で、全面敗訴した場合でも支払額はせいぜい80万円程度でしょう。おそらく60%程度の確率で30万円程度を支払うということで和解になると思われます。20%程度の確率で全面勝訴ですね。」とアドヴァイスを得たとします。その場合、訴訟の期待値は、(-80万円×20%)+(-30万円×60%)+(-0円×20%)=-34万円になりますから、Y社は訴訟を選択することになります。

 顧問弁護士のアドヴァイスによりY社の意思決定は、示談するという「-100万円」の選択から、訴訟という「-34万円」の選択に変わっており、この差額66万円が弁護士のアドヴァイスの価値と評価できます。逆に、弁護士のアドヴァイスによっても選択が変わらないのであれば、「お勉強」にはなるものの、そのアドヴァイスに経済的価値がないということになります。

 この例は、個別事案単位で弁護士のアドヴァイスを定量的に評価するものですが、法に違反して無効となりうる就業規則の規定を改訂する場合など、将来発生しうる複数人との紛争を予防する場合は、さらに計算が複雑になります。

上記の例はそこまで大した金額ではありませんが、高額な事案になればなるほど選択を誤った際のダメージは大きくなります。資産額、取引金額、従業員数などの数値がある程度大きくなってきましたら、「誤った選択」(「放置」という選択を含みます。)を避けるために顧問弁護士を活用することをお勧めします。

4 弁護士が提供するサービス

(1)法律相談

 紛争になりそう、若しくは紛争になったばかり、という早期の段階で弁護士のアドヴァイスを受けることにより、訴訟等のより深刻な紛争にステージが進むことを回避することができます。

 弁護士というと「訴訟」のイメージが強いですが、実際には、訴訟前段階での紛争予防にも力を入れています。

 なお、相談は、面談のほか、電話、メール、FAXなどで可能です。

(2)社員研修

 実際の紛争案件・訴訟を多く経験している弁護士がハラスメントなどを題材とした社員研修を行うことにより、社員が「交渉上・訴訟上、不利にならないためにどう対応したらよいか。」を短時間で理解することができます。


 法律というと「法務」「総務」で対応しておけばよいというイメージがありますが、営業部門にも最低限の法律知識は必要です。法的リスクを適確に管理するためには、「法務」「総務」と「営業」が共通認識をもって事業活動を行う必要です。

(3)リーガルリスクのチェック

 広い意味では法律相談に含まれますが、会社が使っている定型の契約書や修行規則等に法令に違反する点がないかのチェックを行います。これらの書類に違法の不備がある場合、日々、違法な取引・契約をしてしまうことになりますので、リーガルチェックは必須です。

 また、実務上、契約書や就業規則等が立派に作られていても、現場でそのとおり全く運用されていないということが少なくありません。このような場合にも会社は法的責任を負いうるので、依頼により運用レベルでのリーガルチェックを行うこともあります。

(4)深刻化した事案への対応

 いくら紛争の予防に尽くしても、残念ながら、一定数は訴訟等の申告な紛争に発展します。
 深刻化した紛争の対応を非法律専門家である従業員に任せきってしまうと、精神的に病んでしまうなどにより職場全体の生産性低下を招きます。


 深刻化した個別事案の解決(事実調査・交渉・訴訟など)を弁護士に依頼することにより、従業員を紛争対応から解放し、法に基づいた解決を実現することができます。

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