法改正に伴う未払賃金の対応について
1 はじめに
「未払賃金があった場合は,過去2年間分を支払えばよい」とだけ考えていては,現実とのギャップに苦しめられてしまうことがあります。
法律には,常に改正の可能性があります。今回ご紹介する労働者への賃金の支払いについても,法改正によってルールが変わります。
2 未払賃金がある場合は,どの程度さかのぼって支払う義務があるの?
単刀直入にいうと,支払日が到来する日によって異なります。
① 2020年3月31日までに支払日が到来する場合
賃金の請求権の消滅時効は2年間と規定されていました(旧労働基準法115条)から,未払賃金がある場合,使用者は,過去2年前までの未払賃金を支払わなければなりません。
② 2020年4月1日以降に支払日が到来する場合
民法及び労働基準法が改正され,2020年4月1日に消滅時効のルールが変わり,消滅時効期間が5年となりました(現行労働基準法115条)。しかし,経過措置として当分の間は3年となっています。
したがって,現状,2020年4月1日以降に支払日が到来する賃金については,支払日から3年経過するまで,使用者は未払賃金を支払う義務を負うということになります。
3 さいごに
今回は,未払賃金に関する「期間」についてご紹介しました。ただし,実際に未払賃金を支払わなければならない場合,法律上は,遅延損害金を付加して支払うことになります。また,使用者と労働者の間の未払賃金支払に関する紛争は,相場感ではありますが,解決金額が高額化しているように思います。
使用者側における対策としては,現状の給与支払体系のリーガルチェックを行うという予防的対応が最も適切です。
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※本記事は2021年8月1日時点で施行されている法律に基づき執筆されています。