裁判員制度
裁判員制度とは
裁判の国民参加ということであれば、陪審制などの制度があります。これはアメリカでとられている制度で、アメリカの映画やテレビドラマなどで出てくる陪審員と言えば、イメージしやすいかもしれません。
この陪審員ですが、陪審員はあくまで事実認定に係るに過ぎないものであるのに対し、裁判員は事実認定のみならず、量刑判断にもかかわるものであり、裁判員に与えられた権限は相当に大きいものがあります。
そして、裁判員に選ばれた場合には、忙しいなどの理由で拒否をすることはできない建前になっています。そのため、裁判員になる方にとっては相当な負担となることが想定されます。
裁判員裁判の手続関係の詳細については
のwebサイトをご覧ください。
裁判員裁判のながれ
裁判員制度の対象となる事件
裁判員制度は、全ての刑事事件が対象にはなっていません。
裁判員が参加するのは、原則として以下のような重大な刑事事件に限定されています。
① 死刑又は無期の懲役・禁錮に当たる罪に係る事件
② 法定合議事件であって故意の犯罪行為により被害者を死亡させ罪に係るもの
※法定合議事件・・・死刑又は無期若しくは短期1年以上の懲役又は禁錮にあたる罪のうち強盗罪,常習累犯窃盗罪を除いたものに関する事件
具体的には
・殺人事件(人を殺した場合)
・強盗致死傷事件(強盗が、人に怪我をさせ、或いは死亡させた場合)
・傷害致死事件(人に怪我をさせ、死亡させた場合)
・危険運転致死事件(泥酔した状態で自動車を運転して人をひき、死亡させた場合)
・現住建造物等放火事件(人が住んでいる家に放火した場合)
・身の代金目的誘拐事件(身の代金を取る目的で、人を誘拐した場合)
・保護責任者遺棄致死事件(自分の子どもに食事を与えず、放置したため死亡させた場合)
・覚せい剤密輸事件
などの重大事件に限定されています。
また、裁判員制度は刑事の重大事件に限られ、民事上裁判員の制度は存在しません。
弁護士の役割
刑事裁判では、本来は、被告人は有罪であると宣告されるまでは無罪であると推定されます。よって、検察官が裁判官と裁判員に対し、被告人が有罪であることを証明しない限り、被告人は無罪となります。
しかしこれまでは、勾留から続けて起訴された被告人には、多くの場合保釈が認められず、無罪推定が原則であるにもかかわらず、有名無実化し、人質司法と言われる問題が起きていました。
この問題を改善することも、裁判員制度に期待されている役割のひとつです。つまり、今まで職業裁判官に独占されていた事実認定などについて、市民感覚を反映させようという試みです。
裁判員裁判の審理が行われる場合、弁護人(弁護士)は、法律の専門知識を持たない裁判員にわかりやすい説明で、納得・結論を出してもらわなければなりません。そのための制度面や運用面での工夫がなされています。ここが今までの裁判と違うところです。
従来は職業裁判官を相手にしていたわけですが、その場合だと例えば、法廷用語、専門用語などは説明をする必要がありませんでした。しかし、裁判員は専門的知識を当然に持ち合わせているわけではありませんから、これらの説明がどうしても必要になるのです。
従来は職業裁判官を相手にしていたわけですが、その場合だと例えば、法廷用語、専門用語などは説明をする必要がありませんでした。しかし、裁判員は専門的知識を当然に持ち合わせているわけではありませんから、これらの説明がどうしても必要になるのです。
制度面でも工夫がなされています。裁判員裁判の審理前に裁判所で行われる裁判官、検察官、弁護人(被告人が希望すれば参加できます。)が参加する「公判前整理手続」を経ることが裁判員では必須となっています。
公判前整理手続きとは、実際の公判での審理をわかりやすく、迅速に進めるために、刑事裁判における争点を明確化し、さらには証拠の整理などを行う手続きです。
公判前整理手続きとは、実際の公判での審理をわかりやすく、迅速に進めるために、刑事裁判における争点を明確化し、さらには証拠の整理などを行う手続きです。
今回の事件は自白事件で争点は量刑か、あるいは犯人性を争い無罪を主張しているか、正当防衛を主張しているかなど、刑事裁判の争点を明らかにすることが求められます。
また、その争点のために検察官、弁護士側でどのような証拠を提出する予定なのか、証拠の開示を求めます。そのうえで、証拠を採用するのかについての裁判所の判断もなされることになります。
そうすると、実際の裁判では、事件は、争点が整理され、提出される証拠も明らかとなっている状態で、裁判員が触れることになるため、裁判員としては非常にわかりやすい裁判となっているのです。
裁判員と刑事弁護
裁判員の場合、従来の刑事弁護との変更があり得るのでしょうか。
まず、裁判員裁判の場合、弁護人の事前準備に非常に労力を要します。すなわち、裁判員にわかり易く説明をするために、尋問や弁論要旨には工夫が必要となりますし、裁判員裁判が開始される前に、公判前整理手続きで争点を整理することが必須となっていることから、事件としては、長期化が想定されるからです。
また、裁判員裁判は重大事件に限定されるため、接見禁止がなされていることが多く、外部との連絡が弁護人によるしかなくなります。家族などとの連絡係りとしての弁護人の役割も無視できません。
以上からすると、裁判員裁判の場合には、弁護人の負担が大きくならざるを得なくなることから、通常の刑事裁判に比して、弁護人の役割は重要なものとなっているといえます。
弁護人を選択するポイントは以下のとおりです。
1 裁判員裁判は弁護人の負担も重く、共同受任(弁護士2名以上)としたほうがよい。
2 裁判員裁判の経験がある弁護人かどうか。
3 接見禁止がなされる場合などに家族との連絡をこまめにしてくれるかどうか。
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