相続と遺留分について
当事務所では、相続についてのご相談も受け付けております。
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Q 遺留分とは何ですか?
A 相続財産のうち被相続人による自由な処分が制限されている部分のことです。被相続人の財産処分の自由と相続人の諸利益との調整を図ることが制度趣旨とされています(最高裁平成13年11月22日判決・民集5-6-33参照)。逆に被相続人が自由に処分できる部分を自由分といいます。
Q 遺留分はどのような場合に問題になりますか?
A 被相続人の財産が相続によって承継される場合,遺言があれば遺言相続,なければ法定相続のルールに従います。被相続人は,遺言により、誰にどれだけ財産を承継させるかを定めることができますが,一部の相続人の遺留分を侵害する場合は遺留分減殺請求がなされる可能性があります。
Q より具体的にはどのような場合ですか?
A 4000万円の預貯金の財産があったAさんが亡くなり,その配偶者だったBさんとその間の子である長男Cが法定相続人となりましたが(民法887Ⅰ,890),Aさんの生前,AさんとCさんとの間に確執があり,AさんがCさんやその子Dさんに財産を承継させたくないため,Bさんに4000万円の預貯金全部を包括して遺贈するとの遺言を作成したという単純なケースを想定してみます。
Aさんの相続に関して,総体的遺留分は1/2であり(1028②),Cさんの法定相続分は2分の1です(900①)。Cさんは遺贈によって1000万円(=4000万円×1/2×1/2)の遺留分をBさんに侵害されていることになり,遺留分減殺請求権を行使することができます。
Q Aさんは相続財産をCさんに分け与えたくないのですが,対処法はありますか?
A どのようにすればAさんの思い通りに財産承継ができるのでしょうか。①Cさんが相続放棄する,②Cさんを廃除する,③Cさんが遺留分放棄する,④Bさんに相続財産を集中させる遺産分割をする(事実上の相続放棄とも言われます。),⑤Aさんが生前に財産をBさんや第三者に処分する,といった方法が思いつくところです。
Q 結論としてうまくいくのですか?
A 相続放棄,遺留分放棄及び事実上の相続放棄は,それらを行うかどうかがCさんの意思にかかっており,うまくいくとは限りません。廃除については,調停が成立するかどうか,被相続人に対する虐待や重大な侮辱といった行為が認められるかが問題となります。さらに,Cさんを廃除できても,その効果はAさんとCさんとの間で相対的に発生するものですから,廃除,Cさんの死亡,Aさんの死亡という順序を経た場合,Dさんの代襲相続が問題になってきます。
生前贈与については,贈与契約がAさんの相続開始の1年以上前になされたとしても、場合によってはCさんによる減殺請求の対象となりえます(1030)。結論として上記の方法でAさんの狙いを達成するには残念ながら障害があります。