刑事事件の基礎知識
捜査について
平成23年度の統計データによれば、刑法犯の認知件数は、約213万件であり、平成15年から減少傾向にあります。大きな原因は、窃盗の認知件数が減少していることです(約30万件にまで減少しています。)。
また、刑法犯の検挙件数は約112万件、検挙人員は約98万人でした。一日あたり、約5800件の刑法犯が認知され、約2700人が検挙されていることになるでしょうか。
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減少傾向にあるとはいえ、このような大きな数値からすれば、われわれが刑法犯に何らかの形で関与する可能性は十分にあります。日常的な交通事故やトラブルに関与した結果、捜査の対象として取調べを受けることは、意外と身近であるといえるでしょう。
捜査とは、捜査機関が犯罪があると判断したときに、公訴の提起及び遂行のため、犯人を発見・保全し、証拠を収集・確保する行為です。任意同行、任意の取調べ、実況見分、参考人の出頭要請や取調べなど様々な活動があります。
日常生活においてわれわれは様々な観点から捜査の対象となりえます。その場合弁護士に相談し、一定の指針を得ようとすることは重要であると思われます。速やかに対応策などを提案させていただきます。
起訴について
起訴とは、検察官が公訴を提起することであり、公の立場で刑事の訴えを裁判所に提起することです。民事でいえば訴えを提起することと類似しています。
すなわち、民事では一定の法律効果を発生させる要件に該当する具体的事実を訴状において主張するのに対し、刑事では刑罰権の発動という効果を発生させる一定の構成要件に該当する具体的事実、すなわち犯罪事実を起訴状において主張すると対比できるでしょう。
公訴の提起及び遂行の権限は、検察官のみが有しており(刑事訴訟法247条)、検察官が裁判所に対し犯罪事実の内容について審理を求めます。検察官は、被疑者の勾留(ないし勾留延長)が満了するまでの間に、被疑者を起訴するかどうかを決定します(刑事訴訟法208条)。
検察官は、起訴するに当たっては、公訴提起に必要な訴訟条件を具備すること、手続が法にかなったものであること、有罪を得られる見込みがあり公訴提起の必要のある事案であることを判断して起訴にするか不起訴にするか判断します。
また、検察官は、犯罪の嫌疑があっても、犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができます(刑事訴訟法248条)。この場合に公訴を提起しないことを起訴猶予処分と言います。
弁護人としては、被疑者が起訴されるまでは、起訴猶予処分を含む不起訴処分が得られないか検討すべき事案もあるでしょう。
一方、起訴された場合、弁護人は、以後起訴後の刑事弁護活動を実践していくことになります。たとえば、保釈請求の手続が可能となりますので、権利保釈の要件を満たすかどうか(刑事訴訟法89条)、保釈の必要性や相当性は十分か(刑事訴訟法90条)などを被告人らと協議して検討していく場合もありえます。
100万円以下の罰金又は科料を科し得る事件であり(刑事訴訟法461条)、被疑者に異議がない場合は(刑事訴訟法461条の2)、検察官により略式命令の請求が行われる場合があります。裁判所が略式命令をすることができ、それをすることが相当であると判断した場合、公判手続きを経ないで略式命令が発せられます。
略式命令謄本の送達により略式命令が被告人に告知されれば、勾留状はその効力を失いますので(刑事訴訟法345条)、そのとき被告人は釈放されます。起訴後も、裁判所の判断により、被告人と弁護人ら以外の者との接見が禁止される場合がありえます(刑事訴訟法81条)。
略式命令謄本の送達により略式命令が被告人に告知されれば、勾留状はその効力を失いますので(刑事訴訟法345条)、そのとき被告人は釈放されます。起訴後も、裁判所の判断により、被告人と弁護人ら以外の者との接見が禁止される場合がありえます(刑事訴訟法81条)。
この場合、弁護人しか接見が認められず、被告人のご家族でも面会できませんので、弁護人を介して必要な事項をやりとりすることが考えられます。しかし、弁護人が証拠隠滅罪(刑法104条)に該当する行為やそれを手助けすること、あるいは弁護人の業務の範囲を超える作業などはできませんので、弁護人が接見において対応できる範囲には制限があり、お断りすることがあることはご承知ください。
刑事施設について
わが国において、刑事施設とは、刑務所、少年刑務所及び拘置所の総称とされています。受刑者(懲役受刑者、禁錮受刑者、拘留受刑者)を収容する施設が刑務所及び少年刑務所です。このうち成人の収容については刑務所が担当しています。
少年刑務所では、少年の受刑者のほか26歳未満の成年受刑者が収容されますが、少年受刑者が少ないため大多数は成年受刑者となっているようです。拘置所は、主として刑事裁判が確定していない未決拘禁者を収容する施設ですが、死刑の判決が確定した者はその執行に至るまで拘置所に収容されるようです。
平成24年4月1日現在、刑事施設は、本庁については、刑務所62庁、少年刑務所7庁、拘置所8庁の計77庁、支所については、刑務支所8庁、拘置支所103庁の計11庁が設置されています。入所受刑者の罪名は、窃盗や覚せい剤取締法違反が多くなっています。このような罪名での有罪判決が多いという印象と合致します。
刑務所では、入所受刑者が人権を尊重されつつ、その者の状況に応じて適切な処遇を行うことが目的とされます。入所受刑者は、各種の生産作業(木工、印刷、洋裁など)や自営作業(炊事、清掃、介助など)を行ったり、職業訓練を受けたりして、その改善更生が図られています。
作業の収入はすべて国庫に帰属しますが、受刑者には、従事した作業に応じ、作業報奨金が、原則として釈放時に支給されます。作業報奨金は平成23年度の予算額では、一人1か月あたり平均して4723円であったようです。
入所受刑者は、6か月ごとに、受刑態度が評価されます。良好な区分に指定された場合、外部交通の回数を増加したり、自弁で使用できる物品の範囲を広げたりするなどの優遇した処遇が行われているようです。受刑者に改善更生の意欲を持たせることが目的です。
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