第122回 商法第512条(相当な報酬を請求できる権利)
弁護士の内田です。
遅いですが、明けましておめでとうございます。
私は今年が本厄だそうで、早速、年初めからろくでもないことが続いています。
本厄だとか占い師の言う悪い事が当たる(と人から信じられる)メカニズムは、以下のようだと読んだことがあります。
まず、抽象的に「悪い事が起こる」と言われると、大体当たります(1年間良い事ばかりじゃないですよね。)。しかも、悪い事は起きると記憶に残りますが、起きなかったことは記憶に残りません。数百万人と私と同年齢の男性がいると思いますが、厄年に大きな災いが起きなかった人も相当数いるわけです。ですが、そういう人たちの情報は人の記憶に残ることはありません。
「今年、俺は厄年だったけど何もなかったぞー!」って大騒ぎする人はいませんが、「今年、俺は厄年でこんな悪い事があったぞー!」と大騒ぎする人は少なからずいます。そうして、人々の中に厄年に災いがあったという事実だけがインプットされていきます。
こうして、「厄年には災いが起こるんだ」という認識が広がっていくというわけです。
付け加えるなら40歳を過ぎたあたりから男性の多くは心身の衰えを感じるようになると思います。確率論的にも、疾病とかは起きやすい年なんじゃないかなって思います。
さて、本日のテーマは、上記の話とは全く関係なくて、「商法第512条(相当な報酬を請求できる権利)」です。短い条文ですので、以下に引用しておきます。
第512条 商人がその営業の範囲内において他人のために行為をしたときは、相当な報酬を請求することができる。
簡単にいえば、「商売人が誰かのために仕事をしたら、お金の取り決めをしていなくても一定のお金を請求できますよ」ということです。
「そもそも、商売人がお金の取り決めをしないで商売をすることがあるの?」と思われる方も多いでしょう。ですが、実務上、珍しいことではないのです。
よくこの条文が出てくる事件は「建築事件」です。契約で決まっていた工事をやっている最中に「あそこの素材はもっと良いやつにして欲しいです。これでお願いします。」→「(見積もりを出すのは面倒くさいな、後でいいや)いいですが、別料金がかかります。いいですか。」→「いいですよ。」みたいに料金を決めずに追加工事をするということがよくあるのです。
こういう案件で、請負業者側が追加代金の請求する場合は、この商法第512条を使います。たしかに金額の取り決めはなかったけど、相当な報酬としてこのくらいはもらわないと・・・という形で請求します。
商売人の方々は、「しまった。具体的な金額まで決めてなかった!」と思っても、この商法の規定がありますので、焦ってすぐにあきらめないようにしましょう。
ただ、この条文で請求すると、それは高いだの「相当」じゃないだのと争いになりやすいですから、やはり金額はきちんと決めてから仕事をするに越したことはありません。
ところで、この条文、少し怖いと思われませんでしたか。
たとえば、私が勝手にあなたの代理人を語って紛争相手と話をつけてきたとして、「商法第512条があるから相当な報酬を払ってください。」と言えば、払う義務があるかのように読めます。
ですが、実際にはそのようなことにはなりません。
この規定の「他人のために」といえるためには、何かをしてもらった側の合理的な意思・利益に適合していなければならないと解されているからです。全く頼む意思のなかったようなことを勝手にやっても報酬は請求できないようになっているのですね。
いかがだったでしょうか。
企業に関する紛争では、民法と会社法がよく参照されますが、たまに商法の規定が重要になることもあります。
たまには、商法の話をしてみてもよいかなと思いまして、今回の話としました。
以上






