第43回メルマガ記事「契約書チェック」2019.9.26

 

 

弁護士の内田です。

 

今年の1月に子どもが産まれ、何かと忙しい毎日を過ごしています。

 

仕事にも人生にも、「緊急でしなければならない大切なこと」と「緊急ではないが大切なこと」があります。

たとえば、仕事であれば、正に来週には裁判所に出さなければいけない書面を書くということは前者に当たり、最新の法令に関する解説書を読んだり本を書いたりというのが後者に当たります。

 

忙しいと、どうしても前者ばかりに時間を取られてしまい、将来の可能性を広げる後者のことをする時間がなくなりがちになってしまいますね。

 

最近は、「ある程度、そういう時期があってもしょうがないかな。」とあきらめてきています。

 

 

さて、本論ですが、今回は、契約書のチェックについて簡単な解説を行います。

 

あなたが役員・上司から「〇〇の件で先方から契約書が届いた。問題ないかチェックしておいてくれ。」と頼まれたとして、まず、契約書のどこを見ますか。

 

私は、まず損害賠償・契約の解除に関する規定を見るようにしています。

 

それはなぜか。

 

一般論として、損害賠償・解除に関する規定が紛争時の処理において極めて重要になることが多いからです。


また、先方の契約スタンスも大方分かります。

 

ある契約書が自社に有利か不利かというのは、想定している取引によって色々な基準で考えることができますが、1つの分かりやすい基準としては「法律の任意規定に比べて自社が不利となっているか否か」というものがあります。

 

任意規定とは、簡単に言ってしまえば、契約当事者が特に合意をしていなかった部分について適用される法律の条文です。ちなみに、多くが任意規定で構成されている代表的な法律は民法です。

任意規定はあくまで当事者が合意しなかった部分に適用される条文なので、当事者の意思で「民法〇〇条は本契約には適用しない。」というように排除することもできますし、法律とは異なる別段の定めを置くこともできます。

 

損害賠償の原則論は「過失責任主義」で、過失によって他人に損害を与えた場合にはその賠償をしなければなりません。そのため、通常、契約書の損害賠償条項には「甲の故意又は過失により乙に損害を被らせた場合には、甲は乙にその損害を賠償する責任を負う。」など書かれていることが多いです。

 

しかし、たまに、「甲の故意又は重大な過失により・・・」という書き方をしている契約書に出会うことがあります。これはどういうことかと言いますと、本来、過失があれば責任を負わなければならないのが原則なのに、甲は「過失」があるだけでは責任を負わず、「重大な過失」がある場合に限り責任を負うことにして責任の範囲を法律の原則よりも狭くしているのです(言い換えれば、法律の原則に比べて乙(自社)が不利になっているということです。)。

 

こういう契約書の場合、他の条項も乙(自社)に不利になっていることが多いので特に注意が必要ということになります。

 

解除の条項についても同様に注意が必要になります。

 

多くの契約書では、「こういう事情があった場合には、即時、契約を解除できますよ。」という条項が入っています。その事由のなかで、「この契約書に記載の義務に違反したとき。」というような条項があるのですが、細かい契約違反も含めると契約違反をしてしまうリスクというのは多分にあり、細かい契約違反の1つで契約を解除されると非常に困る場合があります。

 

それは、契約の前提となっている取引の実現のために、自社が多額の投資をしている(又はする)場合です。この場合、多額の投資はしたがすぐに契約を解除され、全くリターンを得られずに大きな損失を被った、ということになってしまいます。

 

実際には、継続的契約の法理という判例上の理論があり、あまりに軽微な契約違反を理由とする契約の解除はある程度制限されていますが、それでも最終的に裁判所の救済を得られるかどうかは不確実ですから、契約書上、なるべく解除条件が自社に不利にならないようにチェック・修正しておくことが必要になるといえるでしょう。

 

 

以上、契約書チェックに関する一部の視点に過ぎませんが簡単に紹介させていただきました。

契約書チェックというと机に座って字面だけを負う作業のような印象ですが、実効的な契約書チェックをするためには、①当該契約が前提としている取引はどのような取引なのか、②契約成立により得られるであろう利益はいくらくらいなのか、③当該取引で想定されるイレギュラーはどのような事態なのか、④先方とのパワーバランスはどうなのか(条項の修正を求めることができるのか)、などを関係者にヒアリングして、さらに契約書に存しているリスクのアセスメントを行ってリスクを残置するのか、修正するのか、契約書外のフォローに力を入れるのかなどの対策を考えます。

 

このように、契約書チェックは、法務部門と事業部門の連携がないと上手くいかないので、法務部門と事業部門は共同勉強会など定期的にコミュニケーションを取っておいた方がよいです。

そうすることで、会社全体としての「攻め」と「守り」のバランスが良くなっていくことが期待されます。


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