第55回メルマガ記事「証人尋問について」2020.8.27

 

  弁護士の内田です。

 

 最近、暑くなりましたね。年々夏の暑さは増しているように感じます。地球温暖化が進んでいるのでしょうか・・・。

 

 企業としては、従業員が熱中症で倒れてしまう・・・というようなことのないように、安全配慮義務に基づいて熱中症対策をきちんと講じていかないといけませんね。

 

 当法人の顧問先企業様では、換気扇付の服のようなものを導入し、熱がこもらないようにするなどの対策を行っているところもあります。

 コストはかかりますが、来年以降も暑い夏は続くと思われますので、熱中症対策の投資は遅かれ早かれしなければなりません。だとすれば、早いうちに投資する方が合理的といえるかもしれませんね。

 

 

 さて、今日のテーマは「証人尋問」です。

 

 

 証人尋問といえば、皆様もドラマなどで見たことがあるのでしょうか。アレです。

 裁判官の目の前の椅子に証人が座り、刑事であれば弁護人・検察官が、民事であれば代理人弁護士双方がそれぞれ証人に対して質問をして、それに証人が答えます。

 通常、申請した方が「主尋問」といって先に質問し、その後に相手方が「反対尋問」を行います。

 

 今回は勘違いされがちな証人尋問とのあれこれと、証人尋問の奥深さについて解説します。

 

 まず、勘違いされがちな点の①ですが、よくドラマでは「異議あり!」と勢いよく言っていますが、実際はあまり「異議あり!」ということはありません。

 これには以下の理由があります。

 まず、証人尋問では細かいルールが決まっているのですが、弁護士はそのルールを熟知していますので、通常は、弁護士がそのルールに反する質問をすることはありません。ですので、異議を出すことも少ないというわけです。

 もう1つの理由ですが、証人尋問では質問できる持ち時間が決まっています。決まっている時間の中で的確な質問をして引っ張り出したい答えを導かないといけないわけです。そうすると、相手の弁護士がその答えを引っ張り出せないようなトンチンカンな質問をしている場合、あえて放っておいて無駄に持ち時間を浪費させた方がよいということになるのです。

 

 ドラマではよく裁判官が「静粛に!」といって木槌をドンドンしていますが、あれは我が国にはありません。

 

 あとは、ドラマでは証人尋問で証人だったり当事者が泣き崩れたり、自白したり、語り出したり、といった正にドラマチックな展開が多いですが、そんなことはほとんどありません。

 法律家ではない方が傍聴席から見ても、極めて無味乾燥なやりとりに見えるでしょう。

 

 しかし、一般の方から見て無味乾燥なやりとりのように見えても、実は当事者の弁護士同士(又は弁護士・検察官)で激しい攻防が繰り広げられています。

 それでは、どのようなやりとりが繰り広げられているのでしょうか。民事事件を例に解説します。

 

 通常、証人尋問は双方が書面で主張と証拠を出し尽くした後に行われます。原告側にとって証拠に乏しい事案では、勝訴できるかどうかは正に原告の供述(原告は当事者なので「証言」とは言いません。)が裁判所に信用されるかにかかります。有力な証拠が証人の証言のみである場合にも、同様に当該証人の証言が裁判所に信用されるかにかかるでしょう。

 

 たとえば、交通事故の事案で、原告は自分の体面信号は「青」だったと主張し、被告は逆を主張していたとします。また、偶然、事故発生時に居合わせた原告の友人Aが「原告の体面信号は青だった。」と述べているとします。

 なお、ドライブレコーダー等、当時の信号の状況を客観的に指し示す有力な証拠はないとします。

 

 このような場合、原告代理人弁護士は原告の本人質問(原告は当事者なので証人尋問とは言いません。)、Aの証人尋問を申請し、それぞれ主尋問を行うことになります。他方、被告代理人弁護士はそれぞれに反対尋問を行います(裁判官も最後に質問します。)。

 

 主尋問では、基本的に提出済みの証拠に照らしていかに原告や証人の述べていることが自然かつ合理的であるかを裁判官に示すように質問を組みます。

 一般的に、書面等の証拠は点、原告や証人の供述は線などと言われ、原告や証人の供述を客観的な証拠である書面等で裏付けていくとイメージしていただければ分かりやすいかもしれません。

 

 反対尋問はその逆ですが、難しいのはこの反対尋問です。

 

 主尋問は事前に準備して練習することができるのに対し、反対尋問は原告や証人の供述・証言を聴いてその場で臨機応変にやらなければなりません。事案の時系列、双方に争いのない事実、提出されている証拠を頭に叩き込んでおかなければ、原告や証人が争いのない事実や証拠に反する供述・証言をしたことに気付くことすらできません。

 

 さらに、気付けたとしてそこからがさらに難しいです。

 

 「あなたがさきほど言ったことはおかしいですよね。」という聞き方をしても「そんなことがありません。」「さっきのはこういう意味で述べたのです。」と否定や弁解を受けるだけです。

 では、こういう場合、どうしたらよいのでしょうか。

 

 答えは「放っておく」です。証拠と矛盾したようなことを言っているのであれば証人尋問では弁解を招くような質問はせず、判決の前に書く最終準備書面という書面で不合理であることを指摘するにとどめます(この書面を書かずとも裁判官は気づいていることがほとんどです。)。

 

 では、主尋問で特に証拠と矛盾する供述・証言はなく、「それらしい」ことが述べられた場合はどうしたらよいのでしょうか。

 抽象的な言い方にはなりますが、基本的には、YESかNoでしか答えられないクローズドクエスチョンで供述の核心的な部分以外の周辺的なところについて不合理な供述を導くように努力します。

 

 たとえば、上述した例で被告代理人弁護士が原告に対して「あなたの対面信号は赤ではありませんでしたか。」と聴いたところで「青でした。」と答えられるに決まっています。

 したがって、このような聴き方をするのではなく、たとえば、原告から信号を見た際には確実に目に入るであろうといえる印象に残る看板等があったのであれば、その看板等の内容を聴くなどします(答えられなければ信号をちゃんと見ていなかったのではないかという推測が働きます。推測の程度は低いですが。)。

 

 上述のとおり、原告が「特に目立つようなものはなかったと思います。」と言ったとしても、鬼の首を取ったように「こんなに目立つ看板があったのだから前を見て運転していたのなら覚えていないはずがないでしょう!」などと追いかけ質問してはいけません。そっと、次の質問に移行します。

 

 

 いかがだったでしょうか。

 

 証人尋問の技術は、会社内でハラスメント事件や不祥事が発生した場合の調査にも有効です。よく、会社の不祥事があった場合に弁護士を含む第三者委員会が調査を行いますが、それは弁護士が証人尋問技術と事実認定能力を有するからです。

 

 もちろん、証人尋問技術は日常生活でも活用することができますので、ご活用いただけると幸いです。


 

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