第63回メルマガ記事「不当訴訟」2021.4.21

 

 

 弁護士の内田です。 

 

 最近、暖かくなってきましたね。冬の終わりを感じます。

 

 私は、仕事が終わって帰宅後、21時とか22時頃にランニングをしていたのですが、冬の間は寒くてサボり気味になっていました。

 ランニングや筋トレは、努力の結果が見えづらいので、筋肉量や基礎代謝なども測ってくれる体重計を購入して、定期的に数値の変化を確認することで、モチベーションを保っていました。

 

 最近、久しぶりに体重計に乗ったら、数値は嘘をつきませんでした。

 

 人は水と同様に低きに流れるとは言いますが、ランニングはおろか寝る前にビールなど飲んでいましたので、反省してこれからはちゃんと運動しようと思います。

 

 

 さて、今日のテーマは「不当訴訟」です。聴き馴染みのない言葉と思います。平たく言えば、根拠なく訴えたら違法になって、逆に訴えられるよ、という考え方です。

 「許せん!」と感情的になって訴訟を選択したくなることもありますが、この不当訴訟に該当しないように注意しなければなりません。

 それでは、不当訴訟についてお話していきます。

 

 結論から述べます。

 

 最高裁判例があります。昭和63年の判決ですが、以下のように判示しています(以下、単に「判例」といいます。)。

 

「民事訴訟を提起した者が敗訴の確定判決を受けた場合において、右訴えの提起が相手方に対する違法な行為といえるのは、当該訴訟において提訴者の主張した権利又は法律関係(以下「権利等」という。)が事実的、法律的根拠を欠くものであるうえ、提訴者が、そのことを知りながら又は通常人であれば容易にそのことを知りえたといえるのにあえて訴えを提起したなど、訴えの提起が裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くと認められるときに限られる」

 

 分かりにくいのですが「など」までは例示ですので、究極的な要件はその後の「訴えの提起が裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くと認められる」になります。ですが、例示の部分が具体的に示されているので、通常はこちらを参考にして不当訴訟に該当するかどうかを論じます。

 

 大切なことは、訴訟提起して敗訴したからといって、直ちに「不当訴訟」と評価されるわけではないということです。

 訴えられた被告からすると何とも納得できないような気もしますが、争いのある法律関係を裁判で確定する権利は法理国家の根幹をなすものですから、「負け=不当訴訟」とするわけにはいかないのです。判例も「法的紛争の当事者が当該紛争の終局的解決を裁判所に求めうることは、法治国家の根幹にかかわる重要な事柄であるから、裁判を受ける権利は最大限尊重されなければならず、不法行為の成否を判断するにあたつては、いやしくも裁判制度の利用を不当に制限する結果とならないよう慎重な配慮が必要とされる」と判示しています。

 そうは言っても、自分の主張に根拠がないと知っていながら訴えた人やわずかな注意で根拠がないことを知り得た人まで保護する必要はないことから、根拠がないことを知りながら(又は容易に知ることができたのに知らずに)、訴えを提起して敗訴した場合には、不当訴訟になるとしてバランスを測っているのです。

 

 では、実際にどのような場合に「根拠がないと知っていた」とか「根拠がないことを容易に知り得た」と判断されるのでしょうか。

 分かりやすい例を挙げると、100万円を貸したが返ってきていないということで訴えを提起したが、被告から100万円を振り込んで支払った客観的な証拠が提出された場合が挙げられます。いつ貸して、いつ弁済されて、いつ訴訟提起したのか、という時的要素にもよりますが、「根拠がないことを知っていた」又は「容易に知り得た」と認定される可能性が高いでしょう。

 

 一瞬、判断に迷うのが、契約書、動画、録音、メール、LINEなどの客観的証拠が一切ないケースです。客観的証拠が全くないのに訴えることは「不当訴訟」に該当するのでしょうか。

 結論からいうと、客観的証拠がないだけで直ちに不当訴訟になるとは言えません。原告自身の供述も立派な証拠で、実際にも供述証拠だけでその供述どおりに事実が認定されている裁判例も少なくないからです(セクハラ案件など類型的に客観的証拠に乏しい事件において、特に供述証拠重視の傾向があるといえます。)。

 

 結局、原告の主張する事実に反する客観的証拠が出てきて、その証拠の存在を原告が知っていたであろうといえるような事情がない限り、簡単には「不当訴訟」と評価されることはないといえます。

 

 

 いかがだったでしょうか。

 

 私も「裁判を受ける権利」は大切な権利だと思いますが、我が国では法律の教育をほとんどしないため、あまり「裁判」という選択肢が出てこないように思います。

 「知ってさえいれば助かったのに」と思うことも少なくないので、義務教育でもう少し法律の基礎的なものは教えた方がよいのではないかと感じます。

                                            

 

 

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