第64回メルマガ記事「不当訴訟」2021.5.27

 

  弁護士の内田です。 

 

 暑くなってきましたね。「6月からは半袖でもいいかな」と思う蒸し暑さです。

 

 最近、知識の幅を広げるためにファイナンシャルプランナー技能士の試験を受験したのですが、このご時世でも非常に多くの受験者がいました。人気の資格なのですね。

 試験会場では、皆さん黙って教科書を読んでいたので感染リスクは低かったと思います。

 

 思えば、資格試験というのは非常に高リスクな行いです。数十時間・数百時間を費消して勉強し、合格すればよいですが不合格となれば成果(資格)は得られません。その意味で、オールオアナッシングです。

 その数時間・数百時間を労働に当てれば相応の収入が得られますし、あるいはより効率的な投資活動に当てた方が良かったという場合もあります。

 

 「何のためにその資格取得を目指すのか。」「投資するお金と時間に見合うリターンが見込める資格なのか。」といったことは良く考えてから資格取得勉強をしなければなりませんね。

 

 

 さて、今回は「除外賃金」についてお話します。

 

 除外賃金と聴いて「あぁ、除外賃金ね。」と思われる方は少ないのではないでしょうか。あまり聴き慣れない言葉だと思います。

 しかし、これを理解していないと残業代の計算を誤ってしまい、不足の残業代を支払うことになってしまいます。

 

 除外賃金とは、基礎賃金に算入されない賃金のことです。ここで「基礎賃金」というまた聴き慣れない言葉が出てきましたね。

 基礎賃金とは、残業代(法律的には「割増賃金」といいますが、馴染みやすい残業代という言葉を使います。)の基礎となる賃金のことです。

 結論からいいますと、原則として、労働基準法第37条第5項・同施行規則第21条に列挙されている賃金(除外賃金)以外の賃金は全て基礎賃金となり、残業代計算に組み入れなければなりません。

 以下では、実際に例を挙げて説明します。

 

 たとえば、Aさんの労働条件及びX月の労働時間が、以下のとおりだったとします。

 賃金 = 基本給:20万円 通勤手当:2万円 役職手当:3万円

 労働日及び労働時間 = 日所定労働時間:8時間 休日:土日祝日

 X月の労働時間 = 法定時間内労働時間:160時間 法定外労働時間 40時間

           法定休日・深夜労働:0時間

 

 Aさんの賃金は全て「月単位」の賃金で構成されていますので、まず時間単位の賃金に換算します。計算式は、基礎賃金/月平均所定労働時間(※1)になります。

※1 月平均所定労働時間 = (365日-年間休日日数)×日所定労働時間÷12月

   Aさん = (365日-119日)×8時間÷12月=164時間

 

 これをAさんの基本給に当てはめると、20万円÷164時間≒1220円になります。基本給に関する残業代は、1220円×1.25×40時間=61000円ということになります。

 

 Aさんの残業代計算はこれで終わりかというと・・・そうではありませんね。冒頭で述べたとおり、労働基準法第37条第5項・同施行規則第21条で列挙されていない賃金は全て基礎賃金となりますので、役職手当についても同様に残業代を支払わなければなりません(役職手当は同条に記載がありません。)。

 役職手当の残業代を計算すると、3万円÷164時間=183円、183円×1.25×40時間=9150円になります。

 

 最後に、通勤手当2万円ですが、通勤手当については労働基準法第37条第5項に記載がありますので、これは除外賃金として基礎賃金に入れなくてもよい・・・と、当然になるわけではないのです。ここが、多くの企業様で誤っている点です。

 

 除外賃金は、形式ではなく実質によって判断されます。たとえば、通勤手当であれは、通勤手段・距離等の個別の事情に応じて金額が算定される形になっていなければなりませんし、家族手当であれば扶養家族数に応じて金額が算定される形になっていなければなりません。

 「通勤手当」「家族手当」という名称を使用していても、通勤手段・距離などに関係なく・・・扶養家族数に関係なく・・・一律に一定額を支給しているような場合、実質的には除外賃金に当たらないとして、基礎賃金に組み入れられます。

 

 もし、Aさんの通勤手当が実質を伴わないものであった場合、Aさんの雇用主は、(2万円÷164時間)×1.25×40時間≒6098/月を支払っていないということになり、これに加えて遅延損害金も支払わなければならなくなります。時効期間分ほど遡って支払わなければならなくなることが通常なので、従業員全員分となると馬鹿に出来ない金額になります。

 

 

 いかがだったでしょうか。

 

 本メルマガを機に、「除外賃金に当たらないのに残業代計算から外している手当等はないか?」という観点から賃金規程等を確認されてみてはいかがでしょうか。

 同一労働同一賃金の原則との関係においても、今後は、必要性の低い手当は削除して、シンプルな賃金体系にしていった方がよいといえるでしょう。

 

 

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