第48回メルマガ記事「パワハラ」2020.1.31
皆様、明けましておめでとうございます。
弁護士の薄井健太と申します。
今月より、弁護士法人ラグーンで勤務させていただいております。
まだ弁護士としてのスタートを切ったばかりであり、慣れないことだらけではありますが、少しでも地域の皆様のお役に立てるよう、研鑽を積んでまいりますので、今後とも何卒よろしくお願い致します。
さて、今回は昨年立法化されたパワハラ防止対策の義務化についてお話しさせていただきたいと思います。
昨年5月29日に参議院本会議で可決された、改正労働施策総合推進法第30条の2では、①職場において、②優越的な関係を背景とした言動、③業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動であること、及び④その言動により労働者の就業環境が害されること、の各要件を満たす言動をいわゆるパワハラとして定義し、このようなパワハラを防止するため、事業主に、労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備、その他雇用管理上必要な措置を講じることを義務づけています。
そして、このようなパワハラ防止のために適切な措置を講じていない事業主については、厚生労働省の是正指導の対象となり、さらに是正指導に応じない事業主については、厚生労働省が企業名を公表する場合もあるとしています。
いかなる行為が上記①~④の用件を満たすパワハラに該当するかは、具体的な状況次第な部分もありますが、厚生労働省で現時点でパワハラの6類型を示しています。そのパワハラの定義に当てはまる6類型の例は、
o 身体的暴力による攻撃
o 人格否定などの精神的攻撃
o 仕事を与えない・職場を隔離させるといった行為
o 異常なノルマ、過酷な環境、勤務と関係のない作業を行わせるといった過大な要求
o 実力に合わない簡単すぎる業務を任せるといった過小な要求
o 集団で1人へ他の従業員との接触を妨害したり、行動を監視したり、休暇申請をした従業員へ嫌がらせをするといった個を侵害する行為となっています。
これらのパワハラが生じないよう、事業主皆様の皆様としては上記必要な措置を講じなければならない訳です。
いかがだったでしょうか。
今回の防止策の義務化の時期については、大企業については今年春ころから、中小企業については2022年4月からの見通しですから、大企業についてはすぐにでもパワハラ防止システムの構築が必要となりますし、中小企業についても、準備期間は残り2年ほどしか無く、実際問題としてそれほど余裕があるわけではありません。今回の法改正では見送られたものの、今後罰則化される可能性も否定できません。他方で、何がパワハラに当たるかは、厚生労働省の6類型の例示があるとはいえ、事業主にとって必ずしも一義的に明確とはいえず、採用すべき防止措置の内容も、当該会社の規模、業種、業務体制等から具体的に判断する必要があるものと思われますが、その判断も絶対の基準があるというものではありません。
結局、一言で簡単にパワハラ防止と言っても事業主にとっては、様々な難しい判断を迫られることになるのです。
昔から、「備えあれば憂いなし」と申します。一度自社のパワハラ防止対策について見直し、必要に応じて専門家の助言を受けることが大切ではないでしょうか。