第81回メルマガ記事「契約不適合責任と契約に至る過程の関係」

弁護士の内田です。

 

 少し早いかもしれませんが、年末の近づきを感じます。

 

 政府の政策のせいなのかどうかは分かりませんが、事務所の近辺ではホテルの宿泊料がどこも5000円くらい高くなっています。手続が面倒なので使う気がない私にとっては迷惑な話です。

 減額されても結局は政策実施前の代金と変わらないのであれば、需要喚起の目的が阻害されるのではないかと思うのですが・・・皆さまはどう思われますか。

 

 結局、平常価格のホテルが見つからなかったので高い宿泊料で予約を取ったのですが、ちょっと釈然としない気持ちです。

 

 

 話の流れとしては、なぜカルテルは独占禁止法で禁止されているのかといった話になりそうなのですが、今回は独占禁止法ではなく契約不適合責任に関する話をします。

 

 契約不適合責任という聴き慣れない方もいらっしゃると思いますが、瑕疵担保責任というと「聞いたことがある。」という方も多いのではないでしょうか。

 

 2020年4月1日に新民法が施行され、それ以前に瑕疵担保責任と言われていたものは契約不適合責任に変わりました。契約書チェックの仕事をしていると、未だに「第〇条(瑕疵担保責任)」と旧法のままになっている契約書が散見されます。

 この瑕疵担保責任と契約不適法責任、名前こそ全然違いますが、中身としてはそんなに大きな変わっていません。

 

 最も分かりやすい例は、建物売買です。たとえば、購入した建物の屋根裏などに施工不良があって雨漏りが発生していることが判明したという場合、旧法では「隠れた瑕疵」があるとして補修や補修費用の請求などが可能でした。

 これが契約不適合責任に変わり、補修に関する請求のみならず、代替品の提供や代金の減額なども請求できるようになりました。また、「隠れた」という要件は無くなりましたので、フローリングの損傷など少し注意して見れば分かるような欠陥であっても、その補修等を求めることができるようになりました。

 

 では「瑕疵」と「契約不適合」は何が違うのかというと・・・実はあまり変わりありません。少し難しい言葉になるのですが、「瑕疵」には「客観的瑕疵」と「主観的瑕疵」があると考えられていました。客観的瑕疵とは、たとえば建築基準法に定める柱の強度を有していないなど客観的に誰が見ても明らかな欠陥です。これに対し、主観的瑕疵とは、建築基準法上は柱の太さは120mm角で十分だったが契約書上は135mm角を使用するようになっていた場合の120mm角の柱です。客観的には問題ないのだけれども、当事者の合意(主観)からは外れている性状・性能というのが主観的瑕疵なのです。

 もうお分かりになるかと思いますが、契約不適合とはほぼ=主観的瑕疵です。すごく簡単に言ってしまえば「契約で約束したものになっていないこと」です。

 

 このように解説すると客観的瑕疵と主観的瑕疵が全く別物であったかのようにも思えますが、そうではありません。事実認定上は、客観的におかしいものは当事者の合意(主観)からも外れているはずだ(契約に適合していないはずだ)ということになりますので、主観的瑕疵を論ずる際は、客観的にみてどうなのかということも必ずと言ってよいほど問題となります。

 

 瑕疵と契約不適合に実質的な変化はほとんどないのに、なぜわざわざ法改正したのか疑問に思われる方もいらっしゃるでしょう。正にそこがポイントで、わざわざ契約不適合責任などと言うようになったのは、「契約責任を論ずるに当たっては、当事者の合意内容を重視しますよ。」ということを明確にするためです。

 「重視しますよ、と言われても何をしてよいやら。」と思う方もいらっしゃるでしょう。

 

 答えは簡単で、契約に至る過程では自社のニーズを明確に発信して、そのやりとりを記録化することです。ベストなのは、契約書の中に「甲は〇〇という目的で乙と契約しました。」「本件商品を使って〇〇ができる。」など自社が契約した決め手となった理由を書いてしまうことです。

 そうすると、裁判所は「甲は〇〇ができるっていう前提でこの契約をしているのだから、本件商品で予定されていた性能は〇〇以上であることだったはずだ。」というように甲に有利な契約解釈をしてくれるようになります。逆に、こういった記載がないと、当事者で予定されていた性能の程度は判然としない→本件商品の性能が合意していた水準未満であるとは認定できない→敗訴、といったことになります。

 

 従前の契約書の「隠れた瑕疵」を「契約不適合」に修正しただけの契約書も多いですが、上記の点を意識して契約書の冒頭部分に契約に至る過程を詳細に書いたり、性能を別紙の形で細かく書いている契約書もたまに見かけるようになっています。

 

 皆様の会社におかれましても、少なくとも重要な契約に関しては上記のような工夫をされてみてはいかがでしょうか。

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