第82回メルマガ記事「法律における法定利率の取扱い」

弁護士の内田です。

 

 ワールドカップ、日本がドイツに勝ちましたね。

 私は、子どもの就寝時間との関係で前半しか見ることができず、「この様子だと後半にもう1点くらい取られて負けるだろうな。」と思って布団に入りましたが、朝、ニュースを見てびっくりしました。

 

 最後まであきらめない強い気持ちと戦略の重要性を教えられた一戦でした。法廷でもかくありたいと思います。

 

 

 本日のテーマは「法律における法定利率の取扱い」です。本日は数字の話になります。

 

 皆様は「法定利率」という言葉を聴かれたことはあるでしょうか。その名のとおり、法律(民法)が定めている利率のことなのですが、この法定利率は、法律のあらゆる面で関わってきます。

 代表的な例を3つ挙げます。

 

 商人間(株式会社と株式会社間の取引をイメージしていただければと思います。)でお金の貸し借りをした場合、特に契約書で利息を定めていなくても、貸主は借主に法定利率での利息を請求することができることになっています(商法第513条)。

 

 また、損害賠償請求の際、請求者は損害賠償金の元本に加えて「遅延損害金」も請求できるのですが、その遅延損害金の計算は法定利率によることとなっています(民法419条)。

 

 最後に、将来に毎年発生する損害賠償金をまとめて現在に一括して受領する場合、本来、毎年分割でもらったのでは運用して得られなかった利益を得られてしまいますので、その利益が損害賠償金から控除されることになります(民法417条の2及び同法722条)。そのときの利益を計算する利率も法定利率になっています(同条)。

 これはちょっと難しいですが、たとえば、株式会社Xの取締役Yが競業避止義務に違反して取引先Zを奪って独立したとします。これによってXZから得られる利益を失うことになるわけですが(これを「逸失利益」と言います。)、裁判所は損害賠償を認めるとしても2年程度しか認めない傾向にあります(Yの行為がなかったとしても本当にXZ間の取引が長年にわたり継続したとは認定し難いため。)。XZから得られていた利益が毎年500万円だったとすると、2年分だと1000万円だということになるのですが、この1000万円の損害はYの行為によって直ちに全部が発生すると考えるのではなく、今年は500万円、来年にまた500万円が発生すると考えます。

 そうすると、Xは、本来は損害賠償時点では500万円しかもらえず、500万円しか運用できないはずなのに、1000万円を一括してもらうことで本来より500万円多く運用できてしまうという結論になるのです。

 現実とは違いますが、たとえば銀行に定期預金した場合、年5%の利息が付くとすれば、本来Xが1年目に得られる利益(利息)は25万円(500万円×5%)なのに、一括してもらってしまうと50万円(1000万円×5%)の利益が得られることになってしまいます。こういったもらい過ぎになる金額は引きましょうというのが法律の考え方なのです。

 実務上は、この計算をするのにライプニッツ係数という係数を使います。この係数を求める計算式は専門的に過ぎますので詳細は割愛しますが、法定利率が低いほど大きな値になります。

 

 では、法定利率は何%かと言いますと、驚きの3%です(民法第404条)。2020年4月1日まではさらに驚きの5%でした。

 我が国における実際の銀行での利息といえば・・・言うまでもないでしょう。年3%で安定運用できる投資商品があれば教えて欲しいくらいです。

 

 3%か5%とこの数字だけ比べれば大した話でもなさそうですが、実際にはかなり大きな違いになります。

 交通事故・労働者災害、BtoB取引での損害賠償などでは賠償金が1億円といった高額になることも少なくありません。A社がB社に1億円の損害賠償義務を負ったとして、裁判で争っているうちに1年が経ったというケースで考えてみると、A社が支払う遅延損害金は5%なら500万円、3%なら300万円となり、当たり前ですが元金が大きいほど差額も大きくなります。

 これはまだ分かりやすい例ですが、最も影響が大きいのは最後にご説明した逸失利益です。たとえば、年収500万円のCさんが労働災害で法律上最も重い第1級の後遺障害を負ったとします。Cさんがその労働災害がなければあと30年は働けたとすると、Cさんの逸失利益は以下のとおりになります。

 

<5%の場合>

 500万円×100%×15.3725(ライプニッツ係数)=7686万2500円

<3%の場合>

 500万円×100%×19.6004(ライプニッツ係数)=9800万2000円

 

 実に2000万円以上も差が生じるのです。これは、上述した法定利率とライプニッツ係数の値が反比例することに起因しています。

 

 以上のとおり、法定利率は法律実務において極めて重要な役割を占めています。

 しばらくは法定利率の変更はないと思いますが、もし将来、ニュースなどで「法定利率見直しか?」などという記事が出た際は、この記事を思い出していただけると嬉しいです。

 

 

 いかがだったでしょうか。

 

 法律というと文系のイメージですが、元金・利息・遅延損害金の計算などは、変な特約があると非常に難しくなります。かなりのエクセルの使い手でなければ手に負えないような事案もあります。

 

 よく数字は嘘を付かないなどと言われますが、統計など嘘を付く数字もありますので、数字を妄信するのは危険です。

 細かい数字が並ぶと精査する気を喪失させられることもあろうかと思いますが、そういったことがないように注意しなければなりませんね。

しなければなりませんね。

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