第97回 原理原則ベースの経営の重要性

原理原則ベースの経営の重要性

 

弁護士の内田です。

 

 前回、「花粉症が辛い」という話をしましたが、その後、ネットで調べたところ「ヤクルト1000」を習慣的に飲むと良いという記事を見つけました。

 さっそく、コンビニでヤクルト1000を購入し、現在、3週間ほど継続しているのですが・・・非常に効果があったようで、現在は、鼻も通り、目も痒くありません。

 

 私は決してヤクルトの回し者ではありませんが、花粉症に苦しまれている方は是非「ヤクルト1000」を試されてみてください(個人差はあると思いますが)。定期便なんかもありますよ。

 

 さて、本日のテーマは「原理原則ベースの経営の重要性」です。

 

 内部統制と密接に関わる業務として「マニュアル作り」があります。

広い意味では、危機管理規程のような規程類の作成もこれに含んで理解してよいでしょう。

 

マニュアル作りとは

 従業員数が数人の小規模企業であればともかく、企業がある程度大きくなってくると必ず「マニュアル作り」の壁に当たります。上場前に慌てて作ることもあるでしょうが、本来はその前段階で出来ているのが理想です。

 マニュアルというとネガティブなイメージをお持ちの方もいらっしゃるかと思いますが、マニュアルには①商品・サービスの均質化、②会社ルールの明確化による業務萎縮の排除、③会社理念等の浸透、などの良い効果が多くあります。

 

 この「マニュアル作り」ですが、やってみると非常に大変です。

作るのも大変、浸透させるのはさらに大変です。

膨大な時間を使って作成したマニュアルを誰も参照していないという事態になっては目も当てられません。

 

 マニュアルを作成する上でも、浸透させる上でも、重要なことがあります。

それは、マニュアルに記載している行動の背後にある原理原則をしっかりと説明し、さらにはそれを基に定期的に議論することです。

 

マニュアル作りのポイント

 全ての生じうる事象に対応できるような詳細なマニュアルを作成することはできませんし、あまりに細かく多岐にわたるマニュアルはそもそも覚えられませんし、参照しづらいものになります。

 ある程度の例外はあり得ることを前提に、原理原則に基づいたスタンダードな社員として行動を中心に記載するのがポイントです。

原理原則をしっかりと理解できていれば、マニュアルに記載がないような事態に立ち入ったときでも、原理原則に基づいて社員として正しい行動を速やかに選択することが出来るようになります。

 

 原理原則、原理原則と繰り返していますが、ここでいう原理原則とは、会社の理念、ミッション、コアバリュー、行動指針を指します。

マニュアルには、「会社の理念等に基づけば、こういう場面ではこういう行動を取るべきである。」ということを書くのです。

そして、マニュアルに記載のない様々なケースで「こういう場面ではどういう行動を取るのが我が社の社員として正しいか。」を議論するのです。

 会社の理念等は抽象的で、皆様も思われたことがあるかもしれませんが、どの会社も似たり寄ったりなところがあります。

抽象的な理念等を繰り返し口にしたとしてもそれだけで理念等が浸透することはなく、理念等に基づく議論・行動・検証が必要となります。

 

 細かくルールを作るよりも原理原則をしっかりと浸透させた方が不正防止に効果的という説もあるところで、私もかかる説に賛同する面があります。

 

 このような原理原則という思考法は、法律の世界にも見られます。

司法試験受験時代によく「法の趣旨から考えろ。」と言われたものです。

これはすなわち、法律の条文をそのまま適用できない事態にぶつかったら、なぜその法律が、またその法律の条文が出来たのかから法律を解釈して適用しなさいということです。

 一例として、おそらく法律初学者が初めて学ぶ論証として次のようなものがあります。

すなわち、民法177条は不動産の権利取得等については登記をしないと「第三者」に主張できませんよ、ということを定めているのですが、この条文の趣旨は不動産に関する権利関係を登記によって公に示すことで、取引の安全を図る(Aさんを所有者と思って買ったら実はAは所有者でなかった、といったことがないようにするなど)ことにあります。

 このような法の趣旨からすると「第三者」には、本当の権利関係を知っているけど登記されていないことをよいことに人の権利を害してやろうとしたような人はここでいう「第三者」に入れないで、保護しなくてもよいという結論になります(専門用語では「背信的悪意者」と言います。)。

 

 こういった原理原則から考えるという発想は非常に重要です。

弁護士だと法律相談で未知のケースに当たった場合に、「条文どおりに行けば相談者の負けになりそうだが、法の趣旨からするとおそらく条文を限定的に解釈する裁判例か判例があるだろう。」といった当たりをつけることができます。

そして、実際に後で文献等を調べると予想通りの裁判例・判例が見つかったりします。

逆に、こういった発想ができないと文言だけを捉えて紋切り型の回答をしてしまい、結果、救えたはずの相談者を救えなかったというような結果を招来してしまいます。

 マニュアルもこれと同じで、「原理原則から考えたら今はマニュアル通りの言動をすべきではない。」という場面でもマニュアル通りの言動をしてしまい、それが引いては会社に対する顧客の信用を喪失させることにもなります。

 

 某テーマパークや一流ホテルなどは原理原則ベースのマニュアルがしっかり浸透していると評価されています。

こういった会社の経営者が出版している書籍などを読むのが原理原則ベースのマニュアル作りの第一歩となるでしょう。

 

最後に

 いかがだったでしょうか。

 私が当法人のマニュアルを作り始めたとき、ゴールの見えないレースをひたすら走らされている気分でしたが、作っていくうちに「あぁ、この場面ではいつもこう言っているけど背後にはこういう考えがあるよな」「この考え方に基づけば、あの場面ではこういう行動をすべきだよな」などと自分の中で何となくセオリーとして理解していた言動が体系的になっていき、楽しさを感じるようになりました。

 どうしても細かいルールを書かないといけないと思うと腰が重くなります。

 初めは、骨格だけを作るという気持ちで、自社でセオリーとなっている言動と背後にある原理原則だけをまとめてみると良いかもしれません。

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