第60回メルマガ記事「自宅待機命令について」2021.1.28

 

 弁護士の内田です。 

 

 今年、初めてのメールマガジンです。本年も宜しくお願い致します。

 

 未だに新型コロナウイルスが猛威を振るっていますね。その感染力・毒性は恐ろしいものですが、それ以上に、人々を「分断」させている点に恐怖を覚えます。

 

 新型コロナの影響により業績を良くする会社もあれば悪くする会社もありますし、「自粛」によって利益を受ける人もいれば不利益を受ける人もいます。

 「自粛」により利益を受ける人たちは過度な営業制限等を求め、「自粛」により不利益を受ける人たちは過度な営業制限等に反発し・・・といった具合で対立が生まれています。

 

 これ以上、人々の対立が深化しないことを祈るばかりです。

 

 

 さて、本日のテーマは「自宅待機命令」です。あまり聴いたことがない方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 

 「悪い事をした労働者が受ける命令では?」と思われた方もいらっしゃるでしょう。しかし、それは違います。

 悪い事(就業規則に定められた懲戒事由に該当する行為を行った)をした労働者に対して「出社してくるな。」という処分を課すのは懲戒処分としての「停職」「出勤停止」です。これらは懲戒処分としてなされるものですから、停職中の賃金は支給されません。

 

 これに対し、自宅待機命令を受けた者は所定労働時間働いたものとみなされて、賃金の支給を受けることができます。賃金の有無という点で上述の懲戒処分として停職や出勤停止とは違います。

 では、自宅待機命令とは何かというと、簡単に言ってしまえば「自宅にいるのがあなたの仕事です。」という命令です(勿論、自宅でこういう仕事をやりなさいと命令してもよいです。)。ですから、自宅にいれば命令にしたがって仕事をしたという扱いになるので、賃金が支給されるのです。

 

 少し前までは、「会社に来て仕事をして欲しいから賃金を支払っているわけで、家で仕事をさせてよしとするなんてとんでもない。」と考えられていましたが、新型コロナウイルスの影響で変わりました。テレワークを「自宅待機命令」とは言いませんが、命令の内容は「家で仕事をしなさい。会社に来てはダメですよ。」なので実のところ性質は自宅待機命令と変わりません。

 

 この自宅待機命令ですが、本来、懲罰として使うものではありませんし、テレワーク推進のために使われるものでもありませんでした。

 本来的な使い方は、「正式な対応を決定するための繋ぎ」です。

 

 どういうことかと申しますと、たとえば、会社内でAさんから上司であるBさんにセクハラを受けているという相談があったとします。そして、社内調査を行っている際に、Bさんが何か感づいて目撃者であるCさんに「会社に余計なことはしゃべるな。」などと圧力をかけていた事実が判明したとします。この時点では、調査を終えていないので本当にBさんがAさんにセクハラをしたのか事実認定できないのでBさんに懲戒処分としての停職処分等を課すことはできませんが、他方で、Bさんの出社を放置しておくと他の目撃者にも圧力をかけて証言を封じてしまうかもしれません。

 このような場合に、暫定的な措置として、Bさんに「自宅待機命令」を発出し、出社させないようにするのです。

 

 自宅待機命令は会社の指揮命令権に基づく立派な命令なので違反して出社してくれば命令違反で懲戒処分の対象となりますし、会社の意思に反して無理やり会社管理の建物に立ち入ってくれば建造物侵入罪という犯罪にもなります。

 

 このように、自宅待機命令は正式処分を決する前段階で証拠保全の観点から暫定的に使用することができるものなのです。

 

 但し、全く何の理由もないのに自宅待機命令を発してもよいのかというとそういうわけでもありません。この自宅待機命令はよく退職勧奨の手法としても用いられます。いわば「仲間外れ」にして自ら退職するよう仕向けるのです。

 全く何の理由もないのに長期間の自宅待機命令を発するとこのような「退職に追い込むために使用されたのではないか?」ということになり、指揮命令権の濫用として違法の評価を受けることにもなりえます。

  

 いかがだったでしょうか。

 

 自宅待機命令は非常に使いやすい仕組みです。「新型コロナウイルスに感染している疑いはあるが確たる証拠はまだないのだけれど、とりあえず出社するのは止めて欲しい。」という場合にも暫定措置として使用することができます。

 労働者からしても賃金は支給されるので受け入れやすいです。

 

 是非、「自宅待機命令」を活用していただければと思います。

 

 

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