第52回メルマガ記事「検察庁について」2020.5.28

 

 

 弁護士の内田です。 

 

 メディアは黒川検事長の賭け麻雀ニュースで盛り上がっていますね。同じ司法に仕える者として大変遺憾なところです。

 

 私はあまり麻雀のことは分かりませんが、検察は、今後、賭け麻雀をした人を起訴することができるのか、と思ってしまいますね。国が「賭け金が高くなければやってよい」というお墨付きを与えたとも捉えられかねない幕引きでした。

 

 ところで、皆さんは「検察」についてどのようなイメージをお持ちでしょうか。

 一般市民であっても「警察」に接することはありますが、「検察」に接することはあまりないと思います。

 キムタク主演のHEROなど検察をテーマとするドラマがいくつかありますが、法律的な観点から見た検察というのはあまり知られていないのではないでしょうか。

 

 そこで、本日、検察について法律家の観点からお話したいと思います。

  

 検察といえば、被疑人(マスコミは「容疑者」と言いますが、正しくは「被疑者」と言います。)を裁判にかける「起訴」をする権限を有し、裁判で闘う組織というイメージが第一にくるかと思います。

 このイメージは正しく、検察官は、警察が収集した証拠を精査して(証拠を見て、警察に追加の捜査を命じることもあります。)、被疑者を起訴するかどうかを決める権限を有します。

 起訴不起訴の判断のおいては、前科前歴の有無、反省の有無、被害弁償の有無など多様な要素が考慮されますが、同じような事案でAさんは起訴されたのにBさんは起訴されなかったというように不平等があってはならないので、組織としてある程度「こういう場合は起訴」「こういう場合は不起訴」という基準をもっています。

  この権限は法治国家において極めて重要なものです。

 

 先ほどAさんが起訴されたのにBさんは起訴されない~という例え話を出しましたが、極端な例で「殺人を犯しても政治家は起訴しないが、一般人は起訴する。」という起訴権限の行使が行われたとすればどうなるでしょうか。

 国民の政府に対する信用は地に落ちることになるでしょう。

 どのような立場にある人であっても、法の下に平等に処罰される。これが法治国家の根幹をなしているのです。

 

 検察は三権分立でいう立法、行政、司法のどこに属しているかといえば、「行政」・・・法務省に属しています。しかしながら、上記のとおり起訴権限は誰に対しても平等に行使されなければならないことから、検察には高い独立性が認められるべきとされており、裁判所に準じて「準司法機関」などと言われて高い独立性が認められています。

 

 今回、問題となった検察庁法改正は行政の検察に対する影響力を強化するものであったため(検察官が忖度して政治家や高級官僚を起訴しなくなる危険性が高くなるため)、反対の声が多かったのですが、黒川検事長事件により、今後は「検察に高い独立性を認めても変なことをするから、むしろ、民主的コントロールを及ぼす意味で内閣の関与をある程度認めた方がよいのでは?」という議論も出てくるようになるかもしれません。

 

 さて、重要組織「検察」ですが、実は、何も刑事事件ばかりが仕事なわけではありません。検察庁法第4条が分かりやすいのでそのまま引用すると、同条は「検察官は、刑事について、公訴を行い、裁判所に法の正当な適用を請求し、且つ、裁判の執行を監督し、又、裁判所の権限に属するその他の事項についても職務上必要と認めるときは、裁判所に、通知を求め、又は意見を述べ、又、公益の代表者として他の法令がその権限に属させた事務を行う。」と書かれています。

 ここでのポイントは、検察官は「公益の代表者」ということと、「他の法令がその権限を属させた事務を行う。」ということです。ここでの「事務」は刑事・行政的なものばかりではなく、民事的なものも少なくありません。

 たとえば、民法では検察官に①不在者財産管理人選任申立ての権限、②不適法婚姻の取消請求権、③特別養子縁組の離縁請求権、④親権喪失の審判申立て、⑤後見人の解任申立て、などの権限を認めています。

 

 以上に述べたとおり、検察の国家における重要性は極めて高いため、検察官に求められる能力等も高くなっています。まず、基本的には司法試験に合格しなければなりませんし、事実上、その後の司法修習でも良い成績を採らなければなりません。

 晴れて検察官になった後も、2年に1回程度は転勤させられます。同じ地域でずっと仕事をしていると当該地域での特定の人たちと癒着する危険があるからです。


 なしている業務も恐い人たちから恨みを買うことも少なくないものですから、正に、「秋霜烈日」な仕事といえるでしょう。

 


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