元従業員に対する損害賠償請求の事案
事案の概要
元従業員が事業用の車両の管理を怠ったため、故障させ廃車になったため、従業員に対して損害賠償請求したいとご相談に来られました。
解決までの道のり
まずは、相手に通知文を送りました。すると、相手は、ある程度支払う考えを示しましたが、他方で、賃金等についての未払いや返還金の主張をしてきましたので、交渉でまとめるのは難しいということになりました
そこで裁判を提起し、相手も賃金等の支払いを求めて反訴を提起してきました。
そして判決の直前で、裁判官から和解の勧告があり、相手から会社が妥協できる金額の支払いを受けることで終わることができました。
弁護士の目
従業員に対する損害賠償については、従業員に過失があったとしても、すべてを従業員のせいにして発生した損害の全額を負わせることは困難です。
そもそも従業員のミスは、会社の業務に内在するリスクですし、会社は従業員の労働によって利益を得ているのに何か問題が生じたときにそれを従業員に全て負わせるのは不公平との考えから、責任を限定する法理が判例上認められています。
そのため、弁護士としてはこの責任を限定する法理があるとしても、その従業員のミスは許されないものであることを主張する必要があります。また逆に会社としてはミスが発生しないように対策をとっていたことなども主張しなければなりません。
今回は、和解で終わったので、どのように裁判所が判断したのかわかりませんが、もともと予想していた通りに損害の5割を支払う和解で終了することができました。
必ずしも従業員であった者の責任追及は、経営者として積極的に行いたいものではないかもしれません。
しかし、何もしなければ会社として他の従業員の統制を適切に行うことができません。また、交渉、裁判を通じて、従業員のミスを防ぐためのヒントが見つかるかもしれません。