退職時に生じやすいトラブル(留学・研修費用の返還)

(1)裁判例

 裁判例は、留学が「業務命令」によって行われたものかどうかで、留学費用等の返還請求の可否を判断しています。

 会社の命令によって特定の場所や特定のカリキュラムの研修を受けさせていた場合(言い換えれば、労働者にカリキュラム等の選択の自由がない場合)には、就業規則等で「留学終了後○年以内に退職した場合には、乙は甲に対し、当該研修のために会社が支給した金員を返還する義務を負う。」というような定めをしていても、労働基準法16条に違反して無効としています。

 

 他方で、留学先や専攻分野の選択が自由で、当該留学をするかどうかの選択が労働者の自由意思に委ねられている場合には、金銭消費貸借契約及び返還合意は雇用契約とは別の契約であるとして、有効としています。

 

(2)対策

 まず、最低限、就業規則等に「留学終了後○年以内に退職した場合には、乙は甲に対し、当該留学のために会社が支給した金員を返還する義務を負う。」など返還に関する定めを置く必要があります。

 

 また、上記裁判例を踏まえれば、就業規則とは別に、「就業規則第○条に基づき、甲は乙に対して、留学費用○○万円を貸し付ける」などと記載された金銭消費貸借書も労働者との間で交わしておくことが必要です。

 

 なお、研修の場合も同様に考えられますが、内容にもよりますが、一般的に研修は業務関連性が強いですから、研修費の返還請求はかなり難しいといわざるを得ないでしょう。

 

 

 

 

              

 

 

 

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