メルマガ記事「M&A その2」

弁護士の内田です。

 

カルロス・ゴーン氏の件で日本の「人質司法」に対して批判が強まっているところですが、皆さんはどのように思われるでしょうか。

 

保釈が認められない事由として「被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。」(刑事訴訟法894号)というものがあります。

 

否認(罪を認めないこと)していると、罪を認めていない→罪を逃れるために証拠隠滅に走る危険性がある→4号事由がある、という考え方でなかなか保釈が認められず、逆に罪を認めている(自白している)と、罪を認めている→わざわざ証拠隠滅するとは考えがたい→4号事由はない、という考え方で保釈が認められやすいと言われることがありますが、実際には、裁判官は右の考え方のみに基づいて保釈を認めるか否かを決めているわけではありません。

 

ただ、否認していると保釈が認められづらいというのは事実です。

 

この人質司法の一番の問題点は、冤罪の温床となるということです。

執行猶予が見込まれる事案(虚偽の自白をしても刑務所送りにはならない事案)などでは、「嘘でも言いから罪を認めて早く出たい。」と思うようになり、嘘の自白をしてしまうのです。

 

ところで、保釈保証金10億円でしたね・・・。すごいです。

 

 

さて、本論ですが、前回に引き続きMAの話をします。

 

今日は、MAの最終段階に位置付けられながらあまりスポットが当てられることのないPMI(買収後統合作業)について解説します。

 

A社がB社の株式全部を取得して法律的にB社がA社のものになったとしても、それだけでは上手くいきません。元々、B社にはB社の理念・ルール・オペレーション・文化があるので、それをA社の「やり方」に合わせていかなければなりません。

 

権利だけを移転しても「仏作って魂入れず」の状態なのです。そのため、買収の目的であるシナジーの創出という観点から、B社の物的資源・人的資源をA社に統合していく作業が必要となるのです。

 

では、具体的に何をすればよいのでしょうか。

 

まず、MA実行段階において、対象会社を買収することでどのようなシナジーを得ようとしていたのかが明らかにされているはずなので、その「シナジーの創出」という観点から、単年度・中期経営計画を策定します。

 

次に、上記計画の実現のために必要な現場レベルでの戦略策定や業務上の懸念等の解消を行うために、買収会社と被買収会社の役員・従業員でチームを組成して、アクションプランを検討します。

 

同時に、企業文化や仕事に対する価値観の相互理解のために、買収会社と被買収会社の交流会等のイベントを開催して、価値観の共有を行います。

 

また、組織構造・労働条件・人事評価・職務分掌・会計基準・IT関係などのガバナンス面も整合させていく必要がありますので、その設計・構築も行っていきます。

 

その後は、見込んでいたシナジーの創出が実現できているかどうか、経営計画に照らしてモニタリングしていき、必要があればオペレーション・ガバナンス等の修正・改善を行っていきます。

 

何とも難しそうではありますが、要は「買収会社と被買収会社の従業員が仲良く効率的に仕事ができる体制」を構築するというだけの話です。

 

労働条件等の法律が絡む部分も少なくありませんが、「仕事をどう連携してやっていくか。」という非法律的部分が大きなウエイトを占めます。

 

MAを考えるときは、このPMIを必ず念頭におかなければなりません。

 

買収後に上手く統合できるかどうかも検討しないまま多額の買収代金を支払い、いざPMIの段階に移ったら被買収会社の従業員が「おたくのやり方にはついていけない。」と言い出して大量離職してしまった・・・買収した意味がなくなった(見込んでいたシナジーの創出が出来なかった)・・・ということになっては目も当てられません。

 

そのために、事前にDDを行ったり、買収後の予期しない事象が発生した場合の処理について定めた詳細な契約書の作成が必要となるのです。

 

 

以上、2回にわたってMAについてお話しました。

 

これを機会に、MAを経営戦略の1つとして活用してみてはいかがでしょうか。

 

                                 以上

 

 

 

 

 

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