簡易事業譲渡・譲受について
1.事業譲渡とは
事業譲渡とは、通常の財産の譲渡にとどまらず、事業(=「一定の営業目的のため組織化され、有機的一体として機能する(得意先関係等の経済的価値のある事実関係を含む。)財産の全部または重要な一部」)を譲渡する手続きを指します。
この事業の説明を聞いてもピンとこない方が多いかと思われますが、有機的に結合している経済的に有意義な財産を譲渡するというこというイメージになります。
2.事業譲渡に必要な手続き(原則)
そういった「事業」を譲渡する際には以下のような法律上、以下の手続きが必要になります。
①取締役会決議(会社法362条4条1項…「事業譲渡が重要な財産の処分または譲受」に該当するため)
②譲受会社側…株主総会決議(会社法467条1項)
③譲渡会社側…株主総会決議(会社法468条2項)
④株主への事業譲渡の通知・公告(会社法469条3項・4項)
⑤反対株主の買取請求(会社法469条1項・2項)
(なお、通常は法定の手続きではないものの当事会社間で事業譲渡契約を締結することが一般的です。)
3.簡易事業譲渡の制度について
上記手続については、株主総会の決議については特別決議(株主の3分の2以上の賛成)が必要となります。もっとも、事業とはいってもほとんど価値のないようなものであったり、本業に比してほとんど必要ないものであったりします。
そのようなものまでわざわざ特別決議(株主の3分の2以上の賛成)を得なければならないのかというと、そのようなことはありません。
会社法によると、譲渡会社において、その「事業」の資産の帳簿価額が、総資産と比して5分の1を超えない「事業」であれば、②の株主総会の特別決議は省略が可能です。
また、③についても譲受会社において、その「事業」の対価として交付する財産が帳簿価額の合計額が総資産の5分の1を超えない場合について、株主総会の特別決議を省略することが可能です(会社法468条2項)。
会社の事業譲渡を考えられる際には、まず、「事業」の価値を検討した上で、いかなる手続きを踏めばいいかを検討するとよいでしょう。