不同意性交等罪で逮捕・起訴されたら?
1 はじめに
不同意性交等罪とはどのような犯罪なのか、逮捕・起訴されてしまった場合に、どのような処分が考えられるのか、どのように対処すべきかについて弁護士が解説します。
2 不同意性交等罪(刑法177条)について
不同意性交等罪は、主に不同意わいせつ罪(刑法176条)に挙げられる8つの行為や原因により、被害者が「同意しない意思を形成し、表明しもしくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて」性交等をさせる罪です。
1 暴行・脅迫
2 心身の障害
3 アルコール・薬物の摂取
4 睡眠その他意識が明瞭でない状態
5 同意しない意思を形成させ、それを表明する時間の不存在
6 予想と異なる事態に直面して恐怖・驚愕すること
7 虐待に起因する心理的反応
8 優越的地位の利用
刑法第百七十六条 不同意わいせつ罪
次に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、わいせつな行為をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず、六月以上十年以下の拘禁刑に処する。
一 暴行若しくは脅迫を用いること又はそれらを受けたこと。
二 心身の障害を生じさせること又はそれがあること。
三 アルコール若しくは薬物を摂取させること又はそれらの影響があること。
四 睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせること又はその状態にあること。
五 同意しない意思を形成し、表明し又は全うするいとまがないこと。
六 予想と異なる事態に直面させて恐怖させ、若しくは驚愕させること又はその事態に直面して恐怖し、若しくは驚愕していること。
七 虐待に起因する心理的反応を生じさせること又はそれがあること。
八 経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮していること。
2 行為がわいせつなものではないとの誤信をさせ、若しくは行為をする者について人違いをさせ、又はそれらの誤信若しくは人違いをしていることに乗じて、わいせつな行為をした者も、前項と同様とする。
3 十六歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者(当該十六歳未満の者が十三歳以上である場合については、その者が生まれた日より五年以上前の日に生まれた者に限る。)も、第一項と同様とする。
刑法第百七十七条 不同意性交等罪
前条第一項各号に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、性交、肛門性交、口腔性交又は膣若しくは肛門に身体の一部(陰茎を除く。)若しくは物を挿入する行為であってわいせつなもの(以下この条及び第百七十九条第二項において「性交等」という。)をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず、五年以上の有期拘禁刑に処する。
2 行為がわいせつなものではないとの誤信をさせ、若しくは行為をする者について人違いをさせ、又はそれらの誤信若しくは人違いをしていることに乗じて、性交等をした者も、前項と同様とする。
3 十六歳未満の者に対し、性交等をした者(当該十六歳未満の者が十三歳以上である場合については、その者が生まれた日より五年以上前の日に生まれた者に限る。)も、第一項と同様とする。
3 改正前の強制性交罪との違い
(1)改正前の強制性交罪では、「暴行・脅迫を用いて」という要件になっていましたが、この要件の解釈によって犯罪の成否の判断にばらつきが生じ、成立範囲が限定的になる余地があると指摘されていました。
改正後は、性犯罪の本質的な要素を「同意しない意思を形成し、表明しもしくは全うすることが困難な状態」とし、具体的な事由を挙げ、要件が明確になっています。
(2)性交同意年齢が「16歳未満」に変更されています。
(3)改正前は「性交等」とは、陰茎の膣への挿入(性交)、陰茎の肛門への挿入(肛門性交)又は陰茎の口への挿入(口腔性交)とされていました。
改正後は、これらに加えて、「膣又は肛門に陰茎以外の身体の一部又は物を挿入する行為」も性交等に含まれることになっています。
(4)改正後は、配偶者間において、不同意性交等罪が成立することが条文上明確化されました。
4 不同意性交等罪の法定刑
不同意性交等罪の法定刑は、5年以上の有期拘禁刑です。
5 不同意性交等罪の公訴時効
不同意性交等罪の公訴時効は15年になりました。
なお、被害者が18歳未満の場合には、被害者が18歳に達する日までの期間に相当する期間を加算した期間が公訴時効期間になります。
例えば、被害当時12歳であった場合、時効完成は、15年+6年(18歳-12歳=6年)となります。
6 不同意性交等罪で逮捕・起訴されたら?
(逮捕された場合)
「不同意性交等罪」で逮捕された場合には、その後勾留される可能性があります。
勾留決定がされると、最大20日間身体拘束される可能性があり、仕事や学校に行くことができず、社会生活を送ることはできませんので、退学や解雇といった可能性も出てくることになります。
被害者の方と示談交渉によって、示談を成立させ、被害届を取下げや、宥恕してもらうことが出来れば、早期の身柄解放の可能性が高まります。
もっとも、性犯罪事件の場合、加害者と直接話しができない、したくないという被害者の方が多いことから、弁護士に交渉を依頼することで、交渉が可能になり、交渉が進みやすい可能性があります。
(起訴された場合)
起訴された場合でも、重要となってくるのは、被害者の方との示談交渉です。
また、起訴後は保釈という制度を利用して身体拘束からの解放を検討することができます。
これらの対応にも、弁護士は重要な役割を担っています。
7 最後に
身体拘束からの解放や示談交渉などの刑事弁護活動が、加害者の方にとっては重要となります。
「不同意性交等」事件でお困りの方は、お早めに弁護士に相談することをおすすめします。






