退職時のトラブルQ&A

※質問事項をクリックすると詳しい回答内容が見れます。そちらをご参照下さい。
No. 質問
1 従業員を退職させたいのですが解雇はせず、退職勧奨を行おうと考えています。退職勧奨はどの程度まで許されるのでしょうか。
2 退職予定の従業員が有給を消化すると言って引継もしないで会社を辞めようとしています。有効な対応策はあるのでしょうか。
3 従業員を留学させたのですが、留学が終わってすぐに退職しました。留学にかかった費用を支払ってもらえないのですか。
4 当社を退職した営業職の従業員が当社の顧客に対して当社との取引を止めて自分と取引するように働きかけているようなのですが、どのように対応したらよいでしょうか。
 
 

質問①従業員を退職させたいのですが解雇はせず、退職勧奨を行おうと考えています。 退職勧奨はどの程度まで許されるのでしょうか。

 

違法かどうかの判断基準

労働者の自由意思を侵害するような手段あるいは態様で行われたかどうか(社会通念上相当な方法といえるか)という抽象的な基準により判断されます。 退職勧奨を行った場所、時間、言動などを認定して相当性の判断を行っていますが、特に、労働者が退職勧奨に応じない旨の意思を明確に表明していた後にも退職勧奨を継続していたかが重要な判断要素となります
【退職勧奨が違法と判断された場合の損害賠償】
退職勧奨が「やりすぎ」として違法とされた場合、多くは会社に慰謝料の支払いが命じられています。金額としては、概ね100万円以下となることが多く、よほど悪質でなければ、数万円から30万円程度になります。 もっとも、給与の6か月分の支払いを命じた裁判例もありますので注意が必要です
 
 

質問②退職予定の従業員が有給を消化すると言って引継もしないで 会社を辞めようとしています。有効な対応策はあるのでしょうか

対応策

(1)退職届の提出時期を早める
期間の定めのない雇用契約の場合、退職の意思表示から2週間で雇用契約が解消されることになりますが、雇用契約書や就業規則に「退職する場合には、その1か月前までにその旨を会社に届け出ること。」というような条項を入れておくと、会社の方も余裕をもって後任への引継に対応することができます。
もっとも、退職日を退職の意思表示から1か月後にできるわけではないので注意が必要です。
 
(2)退職金の不支給規程などを設ける
引継を行わなかった場合には退職金の全部又は一部を支給しないという規程を設け、それを労働者に示して引継をきちんとするよう説得することが考えられます。退職金でなくとも、会社が従業員に対して退職に伴って恩給的に支給している金銭であれば、同様の対策を講じることができます。
 
【従業員の引継義務】
従業員には引継義務がありますので、引継義務違反により会社に損害が生じた場合には、会社は従業員に対して損害賠償請求をすることができます。 ただ、実際には、引継義務違反によって会社に生じた損害を立証するのは困難です。また、会社が退職を強制的に阻止することもできません。
 

質問③従業員を留学させたのですが、留学が終わってすぐに退職しました。 留学にかかった費用を支払ってもらえないのですか。

回答

就業規則等に「留学終了後○年以内に退職した場合には、乙は甲に対し、当該留学のために会社が支給した金員を返還する義務を負う。」など返還に関する定めを置く必要があります。
また、就業規則とは別に、「就業規則第○条に基づき、甲は乙に対して、留学費用○○万円を貸し付ける」などと記載された金銭消費貸借契約書を従業員との間で交わしておいた方が良いでしょう。
 
【解説】
裁判例は、留学などが「業務命令」によって行われたものかどうかで、留学費用等の返還請求の可否を判断しています。
留学先や専攻分野の選択が自由で、当該留学をするかどうかの選択が従業員の自由意思に委ねられている場合には留学費用等の返還請求が認められる可能性があります。
 

質問④当社を退職した営業職の従業員が当社の顧客に対して当社との取引を止めて 自分と取引するように働きかけているようなのですが、どのように対応したらよいでしょうか。

1 元従業員の競業避止義務

 
従業員は、原則として、退職後には競業避止義務を負いません。
そのため退職した従業員に競業避止義務を負わせたい場合、雇用契約書、誓約書、就業規則等に退職後の競業を禁止する旨の条項を入れておく必要があります。もっとも、退職後の競業を禁止する条項も無制限に認められるわけではありません。
 

2 退職後の競業を禁止する条項の有効性

裁判所は、
業避止を必要とする従業員の正当な利益の存否
元従業員の会社での地位
競業避止の範囲が合理的範囲にとどまっているか否か
代償措置の有無・内容
などを考慮して有効性を判断しています。
 

3 不法行為・不正競争防止法に基づく損害賠償請求・差止め請求

ところで、従業員に退職後の競業避止義務を全く課していなかった場合、退職後に会社の営業秘密を用たり、会社の信用を貶めたりして営業活動をしていたとしても、会社は何もできないのでしょうか。
  
それはそういうわけでなく、判例も、「社会通念上自由競争の範囲を逸脱した違法な態様で元雇用者の顧客を奪取したとみられるような場合」には、退職後の競業避止義務がない場合でも不法行為責任を負うとしておりますし、不正競争防止法上、営業秘密の不正使用は同法2条7号、虚偽の事実を流布して競業他社の信用を毀損する行為は15号によって禁止されています。
 

4 対策

会社としては、退職後の競業避止義務を課しているのであれば(また、課していない場合でも上記3のような事情があれば)、それに基づいて警告や損害賠償請求や差止めの請求を行うことになります。
 
  • 下関の弁護士による無料相談会

    毎週土曜日 10:00~17:00

  • 下関の弁護士による無料メールマガジン
  • 下関の弁護士 弁護士法人ラグーン採用情報
無料法律相談会

毎週土曜日 10:00~17:00

  • 無料メールマガジン
  • 採用情報