負担付贈与契約の解除
事案の概要
依頼者は、将来、自分の面倒を見てほしいと考え、相手方と養子縁組を行い、相手方が依頼者宅で依頼者の身の回りの世話をする対価として多額の金員を支払った。
ところが、相手方は早々に依頼者宅に寄り付かなくなった。
そこで、依頼者が相手方に支払った金員の返還と養子縁組の解消を求めた事案である。
解決までの経緯
弁護士は、依頼者と相手方との間には負担付贈与契約が成立していたと構成し、その負担部分の不履行により契約を解除する旨の主張を行った。これに対し、相手方は、単純贈与であったなどと主張して争った。
裁判では、裁判所から和解案が提示され、依頼者は、支払った全額ではなかったが大部分の金員を取り返し、また、相手方との養子縁組を解消することができた。
弁護士の目
贈与契約は、無償の契約ですが、一度履行してしまうと、後で相手が気に入らなくなったからといって「あげたものを返せ」とは言えません。
しかし、本件のように、贈与契約に特定の「負担」(本件でいえば、依頼者の身の回りの世話をすること)が付いていたという場合には(「負担付贈与契約」と言います。)、相手方がその負担を履行しない場合には、「あげたものを返せ」と請求することができます。
実際の裁判では、当事者間で贈与契約にそのような「負担」の合意があったのかが争われます。贈与契約では、基本的に書面になっていることが少なく、贈与契約書というような書面がない場合には、当該贈与契約があった前後の状況や当事者の属性など諸般の事情を細かく主張立証して合意の存在を立証するほかありません。
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