第24回メルマガ記事「分かりにくい著作権の落とし穴」 2018.7.12号
弁護士法人ラグーンの仁井です。
前回のメルマガでも話題になったワールドカップも佳境を迎え、いよいよ決勝戦です。
大躍進のクロアチアと優勝候補フランス。
個人的には「ジャイアントキリング」大番狂わせを期待しています。
やはり小国が大国を破るというストーリーには興奮を覚えますね。
今大会からVAR(ビデオで審判の判定を補助するシステム)が導入され、過剰な負傷アピールが露呈した「劇団ネイマール」も話題になりました。
人を欺く行為には容赦ない批判が浴びせられますね…
その他にも日本代表の活躍等の見どころ満載のワールドカップでした。
決勝戦が楽しみです!
さて、それでは本題に入りたいと思います。
先日、著作権を管理する団体JASRACが、音楽教室から楽曲の使用料を徴収するために、音楽教室に対して使用料支払の契約を求めたというニュースが話題になりました。賛否両論あると思います。
「何もそこまでしなくてもいいのでは…。音楽教室も大変だな…」という感想をおもちの方もいらっしゃると思います。しかし、実は他人事ではなく、著作権は軽視されがちな身近な法律問題の一つです。トラブルになることも多くあります。弊所でも過去に著作権に関するトラブルのご相談をお受けしたことがあります。
【ケース】
Aさんは、自社(B社)のホームページの管理を担当していました。
インターネットでフリー素材とされている画像を見つけ、自社のホームページの見栄えを良くするためにその画像を掲載しました。
ところが後日、C社から、B社に対して、「その画像はうちが著作権を有している。無断使用でうちに損害が発生した。50万円を支払え」という内容証明郵便が届きました。
払う義務はあるのでしょうか?
著作権は分かりにくい権利です。ざっくりと言えば、自分の考えや思いを表現したもの(写真、音楽、本等)に与えられる権利で、権利者に無断で使用している人がいれば、その人に対して使用の停止や賠償を求めることができたりします。
先ほどのケースでは、請求をしてきたC社は、C社が画像の著作権を有していて、B社はC社の許可なく画像を使用しているという前提で、賠償を求めています。
ただ、B社やAさんとしては、「フリー素材だったから問題ないでしょう。それに50万円ってどういう根拠で計算しているのか。そもそもC社が著作権を有しているのかさえ分からないじゃないか」と言いたくなります。
まさにこの点も著作権に関するトラブルを分かりにくくしているところです。
例えば、素材を提供しているサイトの注意書きをよく見ると、「○○目的の利用に限り対価を求めない」という限定があったりします。
「フリー」の意味はサイトによって様々ですし、「フリー」と言っておきながら、そもそも著作権者の了解を得ていない悪質なケースも存在します。
さらに、賠償を求める際に算定根拠となる「本来の対価」も言い値的な側面がありますし、名札がついてあるわけではないですから、著作権者が誰であるのかは一見しただけではわかりません。
このような分かりにくさがあるため、それに便乗して詐欺請求(権利がないのにあるように偽って損害賠償を求める)事案も発生したりしています。
色々と問題はありますが、ケースの結論としては、実際にC社に著作権があってC社が本当に使用を許諾していないという前提であれば、たとえ「フリー素材」という表示を信じたとしても、原則、B社は一定額(相応の使用対価)をC社に払わなければならないということになります。
いずれにしても、人が提供している物を利用する場合には、「フリー」や「無料」の言葉に惑わされることなく慎重に見極める必要がありますし、ケースのようにある日突然書面が届いても、鵜呑みにするのではなく、しっかり事実関係を調査して対応することが重要です。
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