第33回メルマガ記事「配置転換,出向,転籍について②」 2018.11.23号

 弁護士の長船友紀です。

  毎回、スポーツの話題をお届けしていますが、今回は、日産自動車のカルロス・ゴーン会長逮捕のニュースを避けては通れません。

  ゴーン会長がどのようなことを行い、それが犯罪にあたるかどうかの判断は検察官又は裁判官に委ねるとして、司法取引を適用したとする報道に興味を持ちましたので、そのことについて、少し触れさせていただきます。

  「司法取引」とは、「被疑者又は被告人が、刑事事件の情報提供するならば、検察官がその求刑を軽くし、又は起訴する罪の数を減らす。」という取引をすることをいいます。 要するに「情報提供をするならば刑を軽くする」という取引になります。

司法取引は、諸外国では広く取り入れられてきましたが、日本ではこれまで導入されてきませんでした。

しかし、ついに日本でも、刑事訴訟法が改正され、平成30年6月1日からが導入されることになりました。もっとも、対象となるのは他人の刑事事件に関しての情報提供だけであり、対象となる罪も、贈収賄や詐欺などの経済事件や、麻薬や覚せい剤などの薬物事件などの事件に限定されています

  司法取引には、被疑者又は被告人が重罰を避けるため、あるいは自分の罪を軽くするために司法取引を行い、関係のない他人を巻き込んだり、犯罪の役割の軽い者に罪をなすりつけるように偽証したりする可能性があるというデメリットもありますが、より重要な犯罪の捜査に役立つ情報が得られるというメリットがあります。

  ゴーンさんの件で、本当に司法取引が行われていたとすれば、後者のメリットが重視されたと思われますが、いずれにしても、今後の捜査から目を離すことができませんね。

  さて、今回は、配置転換、出向、転籍がどのような条件で認められるのかについて、お話しさせていただこうと思います。

 

 

(1)配置転換について

前回の復習になりますが、「配置転換」とは、労働者の職種や職務内容、または勤務場所のいずれかまたは両方について、長期にわたって変更する人事異動のことをいいます。

   まず、使用者が配転命令権を有するためには、就業規則等に、使用者が必要に応じ て配転を命じうる旨の定めがなければなりません。

次に、こうした定めがあっても、職種または勤務地が特定されていないことが前提になります。

さらに、使用者が配転命令権を有するときにも、当該命令につき、業務上の必要性が存しない場合、または、業務上の必要性が存する場合でも、それが不当な動機・目的をもってなされたものであるとき、もしくは労働者に対し、通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるときなど特段の事情の存する場合には、当該配転命令は、権利の濫用として無効になります。

(2)出向命令について

   「出向」とは、従業員としての地位を維持しながら、他の使用者の指揮命令のもとで長期にわたり就労させる人事異動のことをいいます。

    配置転換と同様に、使用者が出向命令権を有するためには、就業規則等に、使用者が必要に応じて出向を命じうる旨の定めがなければなりません。

    さらに、就業規則により労働者に出向義務があると解しうる場合でも、個々の出向命令にあたっては、業務上の必要性や人選の合理性が認められなければ、権利の濫用として無効になります。

(3)転籍について

   「転籍」とは、労働者を元の企業との労働契約関係から完全に切り離して、転籍先との労働関係に属させるものをいいます。

    このような転籍の性格上、出向の法理は適用されず、常に労働者の個別的で明確な同意が必要になります。

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