第25回メルマガ記事「社員の給与が差押えされたら…」 2018.7.26号
弁護士法人ラグーンの仁井です。
毎日うだるような暑さが続いていますね。
気象庁の発表によれば、今年は平年並みかそれ以上ということだそうです。
巷では「今年は特に暑いね」という言葉が毎年のように聞かれます。
仕事上、外出する業務も多くあるのですが、炎天下の車内に入った瞬間の暑さと言ったら…
想像しただけでも汗が出てきそうです。
くれぐれも体調管理にはご留意ください。
さて、本題ですが、本日お伝えしたい話は、給与の差押えがあった場合の会社の対応についてです。
例えば、従業員が借金を返済しないという理由で、裁判所から「債権差押命令」という書類が届くことがあります。従業員が会社に対して有している給与の支払いを受ける権利(このような請求権を債権といいます)を、金融機関等の債権者が差押えるという手続きです。
書類を受け取った会社としては、どのような対応をとるべきでしょうか。
従業員が給与の差押えをされる場合、一般的に、従業員としてはかなり追い込まれた状況にあります。経済的に苦しい状況です。人間関係の絆が深い企業ですと、従業員を守りたいとの考えが真っ先に浮かぶかもしれません。
そのため、差押えをしてきた債権者に対する支払いではなく、何とかして従業員に給与を支払ってあげたいと考えることもあると思います。
しかし、差押命令が会社に送達されると、法律上、会社は従業員に対して差押えをされた範囲の給与を支払うことが禁止されます。会社が差押命令送達後に差押えられた給与を従業員に対して支払っても、債権者(金融機関等)に対して対抗できません。対抗できないというのは、「もう従業員に払ったから、うちは知らない」が通用しないということです。
債権者(金融機関等)がその後、会社に対して請求をしてきた場合には、会社は差押えられた給与分を債権者に対して払わなければなりません。
したがって、「債権差押命令」が届いたら、二重払いでトラブルとならないように、差押えられている給与の範囲がどの範囲なのか把握する必要があります。
原則、差押えができる範囲は給与(手取り)の4分の1です。24万円であれば6万円まで差押え可能です。残額18万円は従業員へ支給します。
給与が44万円を超える場合には、33万円を控除した金額まで差押えが可能になります。例えば、給与が50万円であれば、33万円を控除した17万円まで差押えが可能です。残額33万円は従業員へ支給します。
4分の1が原則ですが、養育費を請求するために、従業員の給与が差押えられたというような場合には、例外的に、差押え可能な範囲が給与の2分の1になります。子供の扶養等、一部の請求権は強く保護する必要があるため、差押えができる範囲も広くなっています。
また、別の視点で、企業防衛という観点からは、その従業員が会社内でお金を管理したり事実上使用できる立場にないか確認をして、そのような立場にある場合には配置転換を検討しなければなりません。横領をするような人物ではなくとも、横領を誘発しかねない環境に置くことは避けるべきです。
ただし、当然のことですが、給与の差押えがあったことだけを理由に、懲戒処分をすることはできません。
突然、裁判所から書類が届いて動揺してしまうこともあると思います。
人情が働くこともあるかもしれません。しかし、冷静になり、いま一度書面をよく確認して対応すればトラブルを避けることができます。
それでも不安であれば、気軽に弁護士へご相談ください。
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